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(第10回) ウェイトコントロール

12:00 AM

■フットボール選手のための栄養講座:ウェイトコントロール
○増量のための栄養管理
「食べているのに増量できない」理由には、「体質的に太りにくい」「根本的に食事量が少ない」など、さまざま考えられますが、まずは自分のベスト体重に見合った食事量が確保できているかどうか、カラダづくりの材料となる栄養(たんぱく質・カルシウム・鉄など)が十分確保できているかどうかを細かくチェックしましょう。特にたんぱく質の摂取量が体重1kgあたり2g以上確保できていない場合は、食事の見直しを行い、食事にプラスしてプロテインも有効活用していきましょう。

増量=「ただ単に体重を増やす」ということばかりを意識し、食べたいものだけを食べたいだけ食べていては、無駄な体脂肪まで増えてしまう恐れがあります。競技力向上のための増量、すなわち大きくてキレのある動けるカラダを目指すには、LBM(除脂肪体重)を増やし、体脂肪を増やさないように増量する意識を持つことが大切です。

また、食事量を増やそうと1食でドカ食いするのも脂肪を増やすだけで良くありません。1度の食事で吸収できる量には限度がありますから、食事は回数を増やすことで効率よく全体量を増やしていきましょう。間食も活用して1日4~5回に増やすのがポイントです。

また、食事を意識するとともに、筋肉や骨の合成量を高めるためウェイトトレーニングなどを取り入れて筋肉にある程度の負荷をかけること、熟睡できるよう睡眠時間をしっかり確保することも大切です。

○減量前の心得
選手は減量を始めるにあたり、自分が何を目指して減量に取り組むのか、課題や目標はどこにあるのかを明確にすることが大切です。そして自分のカラダの状況をきちんと把握してから、計画的な減量にはいっていきましょう。これらによってカラダへの負担を最小限に抑えることが可能になり、「勝つための減量」の成功率が高まります。

まずは、いつまでに何kg落とすかの目標を立てましょう。減量幅の目安としては、もとの体重にもよりますが、“1ヶ月に2kg”までがカラダへの負担も少なく現実的な数字です。徐々に体重を落としていく計画を立てましょう。

また、必要な筋肉を落としすぎず、無駄な体脂肪から落としていけるよう、毎日同じ条件で体重(体脂肪率)を測定し、経過をチェックしていきましょう。

○勝つための減量とは?
減量は、摂取エネルギーよりも消費エネルギーを高めることが基本です。よって減量中は、練習(有酸素運動を含む)からの消費エネルギーを高めればいいわけですが、練習量の多い選手を見ていると、今以上に練習量を増やすのはかなり厳しい状況だと考えられます。

こうした場合、食事からのエネルギーカットが得策といえるでしょう。でも、食事からのエネルギーカット=「飲まず食わず」というわけではありません。飲まず食わずで極度の空腹になると、私たち人間のカラダは飢餓状態となり、次にお腹に入ってきた食べ物をできるだけ体内に蓄えておこうとする力が働きます。つまり体脂肪を蓄えやすいカラダ→やせにくい体質になってしまいます。

エネルギー源となるのは炭水化物(糖質)・脂質・たんぱく質。最近では、炭水化物を制限するダイエットが流行っているようですが、炭水化物を極端に減らしエネルギーをカットしすぎてしまうと、筋肉中のたんぱく質をアミノ酸に分解し、アミノ酸からエネルギーを得ようとする働きが起こります。エネルギー量がカットされ、筋肉を分解してしまうのですから当然体重は減りますが、筋肉量が減ってしまった分、代謝が落ちてやせにくい体質になってしまいます。そして筋肉量が減るということは競技力の低下にもつながっていくため、極端な炭水化物(糖質)制限はフットボール選手の減量法としてはおススメできません。

減量中でも運動量が減らない限り、フットボール選手は筋肉の材料となるたんぱく質は体重1kgあたり2gのキープが必要です。筋肉量が減ってしまっては「勝つための減量」にはなりませんし、筋肉量を増やすことはむしろ基礎代謝を高め、体重が落ちやすいカラダになるといえます。
すなわち減量は、必然的にまず脂質から得るエネルギーを調節していくことになります。

■減量を成功させる食事のポイント
「勝つための減量」を成功させるために、リバウンドやストレスが少なく効率の良い減量法の食事ポイントを6つ挙げてみました。

(1)食事を抜かない
(2)食事の質をキープする
(3)調理法・調理器具を工夫
(4)脂質の少ないものを選択
(5)低カロリー食材を味方にする
(6)プロテインを有効に活用する

(1)食事を抜かない
減量中でも、食事は最低1日3食が基本です。私たちの体は極度の空腹になると、次にお腹に入ってきた食べ物をできるだけ体内に蓄えておこうとする力が働き、体脂肪を蓄えやすいカラダ→やせにくい体質になってしまうからです。

(2)食事の質をキープする
パワー・スピード・スタミナを維持しつつ減量するには、食事量は落としても食事の質はキープしておかなければなりません。そのためには、①主食 ②おかず ③野菜 ④果物 ⑤乳製品がそろった「栄養フルコース型」の食事を基本とし、高たんぱく・低脂質・高ミネラル・高ビタミンの食事を心がけましょう。

(3)調理法・調理器具を工夫
自炊をする場合は、調理法や調理器具を工夫して脂質をコントロールしていきましょう! 例えば、湯通しやあみ焼きで余分な脂質を取り除いたり、テフロン加工のフライパンや電子レンジを活用することで、調理の際の油をカットすることができます。

(4)脂質の少ないものを選択
減量中はできるだけ油(脂)の少ないメニューを選ぶようにしましょう。メニュー選びや調理法を考えると、「洋食」よりも「和食」の方が減量時の強い味方になってくれます。
また、いつも飲んでいる牛乳を低脂肪に変える、ドレッシングやマヨネーズをノンオイルやカロリーハーフに変えるというちょっとした工夫も、積み重なれば大きな違いになります。

(5)低カロリー食材を味方にする
野菜、きのこ類、わかめなどの海藻類、こんにゃく、切干大根などの乾物は、低カロリーでありながら体調を整えるビタミン・ミネラル・食物繊維をたっぷり含むので、食事量を制限している時には特に積極的に摂りたい食品です。同時に、満腹感も得ることができるので減量時の強い味方です。

(6)プロテインを有効活用
減量中は食事量を減らすことで、栄養状態が通常よりもダウンしがちです。そこで不足分、強化したい分の栄養をサプリメントで補えば、効率よい減量が可能になります。特に「勝つための減量」では、筋肉量を維持するため、たんぱく質を十分確保する必要がありますが、食品でたくさん摂ろうとすると同時に脂質も一緒についてきてしまいます。
そこで有効活用したいのが、高たんぱくでありながら低脂質の「プロテイン」です。減量期間中は、脂肪燃焼効果を期待して、主原料が大豆系のプロテインを選ぶと良いでしょう。牛乳で飲む場合は低脂肪や無脂肪牛乳を選び、食事の30分前に飲むことで、食欲を抑えカロリーコントロールがしやすくなります。