(第6回) 疲労回復
■フットボール選手のための栄養講座:疲労回復
○疲労回復のための食事
疲労は早めに解消しないと、パフォーマンスの低下はもちろんのこと、ケガを引き起こす原因にもなりかねません。疲労回復のためにマッサージやアイシングなど、外的ケアは熱心に行うものですが、カラダの内からのケアは十分でないケースが多いようです。
疲労回復のまず第一は普段の食事、5大栄養素が整ったバランスの良い食事が大切です。毎日の食事をおろそかにしていては、特別ハードな練習をしなくてもカラダは疲れやすく、回復にも時間がかかってしまいます。よって、疲れにくいカラダ、すぐに回復できるカラダを作るためにも、日頃から5大栄養素がバランス良く摂れる「栄養フルコース型」の食事を実践しましょう!
○運動直後の栄養補給
素早い疲労回復のためには、運動直後の栄養補給が絶対条件です。運動直後、できるだけ早く「炭水化物(糖質)」と「たんぱく質」を摂取することで、カラダは運動モードから回復モードにスイッチが切り替わります。しかし一般的には、運動直後に速やかにしっかり食事がとれる環境が整っていなかったり、運動後すぐは食事がノドを通らないというケースが多いのではないでしょうか。そうした時は、補食やサプリメントを活用し、きちんと栄養補給を行いましょう。
【炭水化物(糖質)の補給】
運動により、筋肉に貯め込まれていたエネルギー(グリコーゲン)が消耗します。運動後いかに効率よく「炭水化物(糖質)」を補給するかが、エネルギー消耗による疲労回復のポイントになります。
運動後30分以内に体重1kgあたり約0.7g、体重70kgの選手であれば約50g(約200kcal)を摂るのが理想です。おにぎり、あんパン、果物、果汁100%ジュースなどや、エネルギーゼリーなどのサプリメントを上手に活用しましょう。
【たんぱく質の補給】
筋肉は水分を除くと約80%がたんぱく質なので、運動後の疲労回復のためには、筋肉の修復材料となるたんぱく質が欠かせません。ハードな運動をした後は、必ず炭水化物(糖質)に加えて、たんぱく質を摂ってほしいものです。
シャケおにぎり、ハムサンドイッチ、牛乳、ヨーグルトなどや、できるだけ速やかに体内に取り込むために、吸収の速いプロテインやプロテイン入りのゼリードリンクなどの活用も有効でしょう。ちなみに、炭水化物(糖質)とたんぱく質を3:1の割合で摂取すると、消耗したグリコーゲンの回復が早まります。
ただし、運動直後の補食やサプリメントだけでは十分な栄養補給とはいえません。家に帰ったら「栄養フルコース型」の食事をしっかり食べて、カラダのメンテナンスをしましょう!
○十分な睡眠
食事のほかに疲労回復のために欠かせないのは、カラダのメンテナンスに重要な役割を担っている「十分な睡眠」です。具体的には、深い睡眠によって分泌される成長ホルモンの働きが大きく関与しています。成長ホルモンには、カラダを大きくする、疲労を回復する、壊れた筋肉を修復するなどの働きがあり、運動後と睡眠中に最も分泌が盛んになります。特に1~2時間ほど経過した熟睡状態、時間帯としては夜10時から深夜2時くらいが最も盛んになるため、早めに布団に入ることを心がけましょう。
ちなみに・・・
疲労回復を早めるには、運動後の栄養補給だけでなく、運動前・運動中のエネルギー補給による疲労の軽減も重要です!
■運動前のBCAA(分岐鎖アミノ酸)摂取
筋肉のエネルギー源となるBCAA(分岐鎖アミノ酸)を運動する1時間ほど前に摂取しておくことで、
① BCAA(分岐鎖アミノ酸)自体が運動中のエネルギーとなりエネルギー持続時間が長くなるため、スタミナの消耗を抑えることができる
② 筋たんぱくの分解を抑えるので筋疲労が軽減される
③ 脳の疲労を抑制するので集中力ややる気が維持される
というように、疲労を軽減しやすくなります。
■運動前・運動中の炭水化物(糖質)摂取
運動前にきちんと食事をとっていても、運動時間が2~3時間を越すような場合は、グリコーゲンを消耗してしまい、カラダが思うように動かず、集中力も低下してきます。これを回避するためには、運動前から体内に炭水化物(糖質)を貯え、運動中にも補給することが必要です。そこでは、マルトデキストリンのように吸収の優れた炭水化物(糖質)が主成分のエネルギードリンクやゼリー、即効性のあるブドウ糖が主成分のタブレットを活用すると良いでしょう。