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(第9回) 夏バテ対策

12:00 AM

■フットボール選手のための栄養講座:夏バテ対策
○夏バテの要因には
① 気温が高くなり暑さによって消化機能が低下する
② 汗を多量にかき脱水を起こしたり、逆に水分を摂りすぎて体内の水分やミネラルのバランスが悪くなる
③ 湿度が高くなると汗の蒸発が妨げられ、体内に熱がこもり体温調節ができなくなる

など、さまざま挙げられます。ですが、食事の工夫や水分補給によって、このような夏バテの要因を解消することができます。

○夏バテに勝つための食事
(1)夏でも「栄養フルコース型」の食事
夏は、暑さによる疲れから消化機能が低下し、食欲が減退しがちです。実際、夏の食事はつい「のど越しの良いそうめんや冷やしうどんだけで終わり」なんてことになりがちではありませんか? しかし、こうした食事だけでは、炭水化物(糖質)が中心となり、たんぱく質・ミネラル・ビタミンが不足してしまいます。

たんぱく質は、筋肉やじん帯など強いカラダをつくったり、持久力を左右する血液中のヘモグロビンの材料となります。筋疲労の回復や持久力アップに欠かせない栄養素なので、たんぱく質が不足すると疲れやすくなったりスタミナ切れを起こしたりします。また、汗と一緒に流れ出てしまうミネラルもしっかりと補給しなければなりませんし、ビタミンは体調を良好に整えるために欠かせない栄養素です。

このように、どの栄養素もバランス良くしっかり摂っていなければ、体調を崩して体力は落ちていくばかり。暑い夏を乗り切るなんてできません。よって、毎日の食事は季節を問わず ①主食、②おかず、③野菜、④果物、⑤乳製品をそろえる「栄養フルコース型」の食事を目指しましょう。

(2)夏の食事をひと工夫
「栄養フルコース型」の食事が基本となりますが、食欲がない時には、お皿がたくさん並んでいるだけで「こんなに食べなきゃいけないの?!」とますます食べられなくなってしまうもの。そこで、「栄養フルコース型」の食事をそろえながらも、なるべくお皿を少なくするメニューにしたり、味付けや食材を考えてみたりと、見た目や食べやすさを工夫してみましょう!

■お皿を少なくするメニュー
例A
夏野菜と豚肉のカレーライスに卵トッピング
→①主食・②おかず・③野菜

例B
そうめんにハム、卵、きゅうり、トマトなどの具をトッピング
→①主食・②おかず・③野菜

例C
冷やした牛乳と果物をミキサーにかけてフルーツミックスジュースに
→④果物・⑤乳製品

■味つけや食材を工夫して食欲アップ
・カレー、トウガラシ、キムチなどの辛味
・酢、梅干、レモン汁などの酸味を使ったさっぱり味
・にんにく、しょうが、シソなどの香味野菜

■食材や調理法を工夫して食べやすさ(ノド越し)アップ
・とろろ、オクラなどのネバネバ食材
・カニ玉などのあんかけ料理、スープなどの水分が多い料理

(3)冷たくて甘いものに注意
暑い時は、アイスクリームや冷たい清涼飲料水、炭酸飲料などをつい口にしたくなりますよね。
これらの甘さは、冷たさや炭酸によって感じにくくなりますが、実際はたくさんの砂糖が含まれているものが多く、摂りすぎると血糖値が急激に上がって空腹感が満たされ、「食欲がわかない」原因にもなりかねません。

また、砂糖の摂りすぎは、炭水化物(糖質)をエネルギーに変えるために必要な「ビタミンB1」をたくさん消耗してしまうことになります。夏は体力を維持するために消費量が増え、かつ水溶性のため汗や尿に排出されやすいので、特に不足しがちな栄養素です。甘いものの摂りすぎでビタミンB1を無駄づかいしないように気をつけましょう。

ビタミンB1不足が続くと、バテたり、疲労が残ったり、体調不良になるなどの症状がでてしまいますので、ビタミンB1が豊富な豚肉やハム、豆腐、ごま、鮭などを積極的にメニューに取り入れることもおススメです。

○夏バテを防ぐ水分補給
人間のカラダの約60%は水分からできています。体内ではさまざまな働きをしており、人間が生きるためには欠かせません。その働きの一つに、体温の上昇を制御する体温調節機能があります。カラダにたまった熱は、汗をかきその汗が蒸発する時に奪われ、体温が上昇しないようコントロールされます。気温が高かったり運動することで体温は上昇していきますので、暑い夏に運動するということは、汗をかくために必要な水分をしっかり補給しておかなければ体温調節ができなくなります。

体温上昇を制御できなくなると夏バテはおろか熱中症を引き起こすことにもなりかねません。熱中症の症状には、熱失神・熱疲労・熱けいれん・熱射病の4つがありますが、症状によっては死に至る場合もあります。水分補給は、競技のパフォーマンス向上だけでなく、自分の身を守るために必須です。また、適切な水分補給が行われないと、食事にも影響が出て栄養不足にも発展します。夏を制する水分補給のポイントをしっかりおさえましょう。

ポイント1:試合や練習の始まる前に水分補給
試合や練習中に脱水になるのを遅らせるために、試合や練習の開始30分くらい前に250~500ml(コップ1~2杯)程度の水分を補給しておきましょう。

ポイント2:こまめにとる
「のどが渇いた」と感じた時には、すでに脱水が始まっています。また、一度にたくさん飲んでも吸収されるのに時間がかかるため、のどが渇く前にこまめに水分補給をしましょう。15~30分間隔でコップ1杯(約200ml)程度が目安です。また、練習後のガブ飲みは食欲の低下につながるので気をつけましょう。

ポイント3:適度に冷やす
10℃前後に冷えたドリンクは吸収が速いことが分かっています。ただし、冷たすぎると胃腸に負担がかかるので気をつけましょう。

ポイント4:吸収の早いスポーツドリンクを選ぶ
運動時には、汗から失われた水分とミネラル、スタミナを維持するための炭水化物(糖質)などを含んだスポーツドリンクがおススメです。ただし、糖分濃度が濃いもの(5~6%)は体内への吸収速度が遅くなるため、糖分濃度2.5%以下のものや、体液よりも低い浸透圧の「ハイポトニック」と表示のあるものを選ぶようにしましょう。
○夏を乗り切るひと工夫
(1)早寝早起きでしっかり睡眠
食事や水分補給とともに、睡眠を十分にとることも夏バテ対策には重要です。夏休みに入ると、つい夜更かしをしてしまうという人も多いと思いますが、筋疲労の回復や筋力アップを促す成長ホルモンが活発に分泌されるのは夜10時~深夜2時頃といわれています。ですから、なるべく早く布団に入り、しっかり睡眠時間を確保しましょう。また、朝寝坊して朝食抜きなんて生活にもなりがちですが、それでは当然栄養が不足し体調不良につながります。このように不規則な生活は夏バテを引き起こしやすくなりますので、規則正しい生活を送り、暑い夏を乗り切りましょう!

(2)食事前のひとシャワー
食事前のひとシャワーは食欲をわかせるのに何かと効果的です。例えば、朝食前に、熱めのシャワーをサッと浴びるとカラダをシャッキリと目覚めさせることができます。また練習後は、ぬるめのシャワーを浴びて練習でほてったカラダをクールダウンさせることで、食欲を回復させることができます。

(3)体重測定
夏は体力を維持するためにエネルギー消費量が増えますし、汗をたくさんかくためミネラルも多量に流れ出てしまいます。こうした消費量に対して栄養の摂取量が見合っていないと、コンディションの低下、疲労の蓄積、筋けいれんなどを引き起こすことになりかねません。体重が翌日も減ったままの場合は要注意ですので、毎日体重を測定し、運動による消費量に食事や水分などの摂取量が見合っているか、しっかり栄養補給がなされているか、チェックしてみてはいかがですか。ただしその際は、毎日「決まった時刻」に「同じ服装」「同じ体重計」で測定しましょう。