(第2回) 「栄養フルコース型」の食事
■フットボール選手のための栄養講座:「栄養フルコース型」の食事
○栄養バランスの良い食事とは
みなさんのカラダは、すべてみなさんが食べたものから出来ています。栄養バランスの良い食事は、良質なカラダをつくり、体調を整え、強い気持ちを引き出す源になるのです。
では、栄養バランスの良い食事とはどう揃えればよいのでしょうか? 簡単に栄養バランスのとれる食事法として「栄養フルコース型」の食事を推奨します。
具体的には、炭水化物(糖質)・脂質・たんぱく質・ミネラル・ビタミンの5大栄養素が整った食事です。フットボールをするうえで、5大栄養素にはそれぞれの役割がありますので、どれも欠かさずバランスよく摂ることが大切です。
○「栄養フルコース型」の食事
「栄養フルコース型」の食事とは、カラダに必要な5大栄養素を、簡単に「フル」に摂ることができる食事のことで、具体的には①主食、②おかず、③野菜、④果物、⑤乳製品の5つをそろえる食事法です。これからは食事の都度、①~⑤がそろっているかチェックし、毎食「栄養フルコース型」の食事を心がけましょう。
<「栄養フルコース型」の食事>
(1)主食
「主食」は、ごはん・パン・麺類(パスタやそばなど)・シリアルなどで、「炭水化物(糖質)」が豊富に含まれています。 「炭水化物(糖質)」は、カラダと脳のエネルギー源です。そのため、炭水化物(糖質)が不足してしまうと、ガソリンを入れずに車を走らせるのと同じようなものです。日本人の食事摂取基準2010年版によると、摂取エネルギーの50~70%を炭水化物(糖質)から摂取することが望ましいとされています。スタミナや集中力の維持が必要とされるフットボール選手にとって、欠かすことのできない栄養素です。
[炭水化物(糖質)の多い食品]
食品名 | 目安量(g) | 糖質(g) | エネルギー(kcal) |
スパゲティー | 1人分(乾80g) | 57.8 | 302 |
そば | ゆで1玉(220g) | 57.2 | 290 |
うどん | ゆで1玉(250g) | 54 | 263 |
ごはん | 1膳(130g) | 48.2 | 218 |
食パン | 6枚切り1枚(60g) | 28 | 158 |
果汁100%りんごジュース | 1本(200ml) | 24.5 | 92 |
はちみつ | 大さじ1杯(22g) | 17.5 | 65 |
あめ | 1個(5g) | 4.9 | 20 |
エナジーメーカーゼリー | 1本(180g) | 49.7 | 200 |
ピットインリキッド | 1本(68g) | 42.5 | 170 |
エナジーアップタブ | 5粒(5g) | 4.5 | 18 |
※五訂増補日本食品成分表より
※栄養補助食品は全てザバス商品の数値(2011年4月現在)
(2)おかず
「おかず」は、肉・魚・卵・豆腐・納豆などで、主菜やメインディッシュともいわれます。主に筋肉や血液の材料となり、カラダづくりを支える「たんぱく質」をたっぷり含んでいます。たんぱく質は、一般的にフットボールをしていない人で体重1kgあたり約1g必要ですが、フットボール選手はその2倍、体重1kgあたり2gのたんぱく質が必要です。そこで、おかずは2品(または2人前)以上食べましょう!
ただし、たんぱく質を多く含む食品は、同時に脂質を多く含むものがあります。脂質は5大栄養素の一つであり、カラダにとって必要な栄養素ですが、摂り過ぎは体脂肪の増加につながりますので気をつけたいところです。そこで、例えば同じ豚肉でも脂の量が少ない部位を選んだり、湯通しや網焼きなど調理法を工夫したり、また、肉・魚などの動物性食品と豆腐・納豆などの植物性食品を上手に組み合わせるなどして、高たんぱく低脂質を意識することも大切です。
[たんぱく質の多い食品]
食品名 | 目安量(g) | たんぱく質(g) | エネルギー(kcal) |
鶏ささみ肉 | 中3本100g | 23 | 105 |
豚もも肉 | 100g | 21.3 | 164 |
牛もも肉 | 100g | 20.5 | 181 |
牛ひき肉 | 100g | 19 | 224 |
ツナ缶詰め(味つけフレーク) | 小1缶(100g) | 18.4 | 141 |
マグロ赤身 | 7切(70g) | 16 | 74 |
豆腐(木綿) | 1/2丁(150g) | 9.9 | 108 |
ボンレスハム | 2枚(50g) | 9.4 | 59 |
納豆 | 1パック(50g) | 8.3 | 100 |
アジの開き | 中1尾(40g) | 8.1 | 67 |
牛乳 | 1本(200ml) | 6.8 | 138 |
卵 | 1個(50g) | 6.2 | 76 |
スライスチーズ | 1枚(20g) | 4.5 | 68 |
ホエイプロテイン100 | 大さじ3杯(21g) | 16.1 | 81 |
アクアホエイプロテイン100 | 大さじ3杯(21g) | 14.1 | 78 |
※五訂増補日本食品成分表より
※栄養補助食品は全てザバス商品の数値(2011年4月現在)
(3)野菜
「野菜」は、体調を整えるために必要な「ビタミン」や「ミネラル」、「食物繊維」が豊富に含まれており、色の濃い野菜・色の薄い野菜・根菜・海藻などがあります。旬の野菜を取り入れながら食べましょう。「私はサラダを食べているから野菜は足りている」と思っている人も多いと思いますが、野菜は生のままだとカサが多く、思ったより食べられないということもあります。サラダだけで安心せず、火を通した野菜料理も上手に組み合わせて食べましょう。
なお、野菜の量は色の濃さにも影響されますが、基本として「毎食、手のひら山盛り1杯以上」を目安にしたいところです。ビタミンやミネラルは不足しがちな栄養素でもありますので、必ず毎食、野菜を使った料理を準備し、積極的に食べるようにしましょう!
ちなみに、どうしても野菜が不足してしまうときは、野菜ジュースからでも良いので、上手に活用してくださいね。
(4)果物
「果物」は、四季折々の旬があり季節を感じさせてくれる食材で、「ビタミン」「炭水化物(糖質)」が豊富に含まれています。主に2つのタイプに分類され、1つは酸味を感じさせるビタミンCが豊富に含まれるもの(オレンジ・グレープフルーツなどの柑橘系、イチゴ・キウイフルーツなど)、もうひとつは主食同様に炭水化物(糖質)を豊富に含みビタミンCが少ないもの(バナナ・桃・メロン・りんごなど)があります。毎食の「栄養フルコース型」の食事ではビタミンCが豊富に含まれるものを積極的に摂り、果物を常備できない時は果汁100%ジュース(オレンジ・グレープフルーツなど)を摂るようにしましょう。
ビタミンCは、腱やじん帯、軟骨などの結合組織を構成するコラーゲンというたんぱく質の合成に不可欠なビタミンです。ビタミンCは水溶性で、水分や熱により破壊されやすいものが多く、また一度に大量に摂取しても体内で使いきれない分は貯えておくことができず、尿中に排泄されてしまいます。さらに、ヒトの体内では合成されないため、毎食きちんと摂ることが大切なのです。
なお、良くフットボール選手はバナナを口にしますが、これは果物のビタミン摂取を目的とするよりは、「エネルギー(糖質)補給」の意味合いが強いです。やわらかく、消化のよい果物は、ちょっとしたエネルギー補給や間食(補食)に最適です。
[ビタミンCの多い食品]
食品名 | 目安量(g) | ビタミンC(mg) | エネルギー(kcal) |
いちご | 1/2パック(200g) | 124 | 68 |
ブロッコリー | 3房(100g) | 120 | 33 |
果汁100%オレンジジュース | 1本(200ml) | 95 | 95 |
キャベツ | 4枚(220g) | 90 | 51 |
オレンジ | 1個(130g) | 78 | 60 |
グレープフルーツ | 中1個(200g) | 72 | 76 |
キウイフルーツ | 1個(100g) | 69 | 53 |
ジャガイモ | 中1個(150g) | 53 | 114 |
トマト | 中1個(240g) | 36 | 46 |
ほうれん草 | 100g | 35 | 20 |
トマトジュース | 1本(200ml) | 13 | 36 |
BCパワータブ | 1粒(1g) | 334 | 4 |
スーパーマルチタブ | 5粒(1.5g) | 250 | 3 |
※五訂増補日本食品成分表より
※栄養補助食品は全てザバス商品の数値(2011年4月現在)
(5)乳製品
「乳製品」は、牛乳・ヨーグルト・チーズなどで、「カルシウム」の宝庫であり、たんぱく質も一緒に摂れる非常に効率的な食品です。カルシウムは、99%が骨や歯などに蓄積され、残り1%は筋肉の収縮や神経伝達といったフットボール選手のパフォーマンスやコンディション維持に重要な役割を果たしています。
しかし、厚生労働省が毎年実施している日本人の栄養の現状調査の中でも、カルシウムは長年にわたり不足していることが指摘されています。食事からのカルシウム摂取が不足すると、骨からカルシウムを放出させることで、体内のカルシウムの量を一定に保とうとされます。また、骨の強さは「骨密度」によって測定されますが、骨密度の高まるピークは20歳頃といわれており、成長期にカルシウムをしっかり摂っておくことが20歳以降の健康にも影響を与えることになります。よって、牛乳であればまず「毎食コップ1杯」を習慣にして欲しいものです。
ただし、乳製品には乳脂肪と呼ばれる「脂質」が含まれていますので、気になる選手は、低脂肪・無脂肪タイプのものをおススメします。
また、牛乳が苦手という人には、体質的にダメな場合と単に好き嫌いでダメな場合とがあります。体質的にダメな場合には、アレルギー、牛乳に含まれる「乳糖」という成分が体内で分解できない「乳糖不耐症」、冷たいものに胃腸が弱い場合などがあります。牛乳そのままではお腹がゴロゴロするけれどカフェオレやシチューなどのように温めたら大丈夫という人もいますし、ヨーグルトなら大丈夫という人もいます。
冷たいものに弱い場合は温めて飲んでみる、乳糖不耐症の場合はヨーグルトにする、味が嫌いな場合はココアやコーヒーと混ぜてみるなど工夫し、カルシウム供給源として非常に効率の良い乳製品を、まずは「飲めそう・食べられそう」なものからチャレンジしていきましょう。
[乳製品の栄養成分比較(100gあたり)]
食品名 | エネルギー(kcal) | たんぱく質(g) | 脂質(g) | カルシウム(mg) | 1食分の目安(g) |
普通牛乳 | 67 | 3.3 | 3.8 | 110 | コップ1杯(200ml)206g |
低脂肪牛乳 | 46 | 3.8 | 1 | 130 | |
無脂肪牛乳 | 33 | 3 | 0.2 | 99 | |
ヨーグルト(プレーン) | 62 | 3.6 | 3 | 120 | カップ1個100~200g位 |
飲むヨーグルト | 65 | 2.9 | 0.5 | 110 | コップ1杯(200ml)216g |
プロセスチーズ | 339 | 22.7 | 26 | 630 | 1cm厚さ1枚20g |
カマンベールチーズ | 310 | 19.1 | 24.7 | 460 | 1切れ20g |
カッテージチーズ | 105 | 13.3 | 4.5 | 55 | 大さじ1杯15g |
生クリーム | 433 | 2 | 45 | 60 | 大さじ1杯14g |
※五訂増補日本食品成分表より