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(第4回) 筋力アップ

1:31 AM

フットボール選手のための栄養講座:筋力アップ

○筋肉が作られるメカニズム

練習やウェイトトレーニングなどで筋肉に強い負荷がかかると、筋繊維が収縮を繰り返すことにより疲労し、非常に細かな部分が損傷を起こすことがあります。すると、成長ホルモンが分泌されて、負荷に対抗できるような強い筋肉に作り直そうという働きが活発になります。このタイミングに合わせて、筋肉をつくるための材料となる十分な栄養と休養(睡眠)をプラスすることで、元の筋肉よりもさらに強い筋肉ができあがります。これが、「超回復」と呼ばれる筋肉が作られるメカニズムです。そしてこの繰り返しが、筋力アップにつながっていきます。

そのため、栄養と休養(睡眠)が足りなければ、筋肉はつくられていきません。せっかくトレーニングを頑張っても、もったいないことに・・・。このように、筋力アップには運動・栄養・休養はどれも欠けてはならない三大要素なのです。

○筋力アップのための栄養とは?

筋肉は、水分を除くと80%がたんぱく質でできています。たんぱく質を英語に訳すと「プロテイン」。語源はギリシャ語の「プロティオス」で「一番大切なもの」という意味です。

5大栄養素の1つであるたんぱく質は、筋肉・骨・血液の材料となるほか、毛髪やつめ、皮膚やホルモンなど、カラダの構成に欠かせない栄養素です。ですから筋力アップ、そして健康なカラダづくりには、材料となる「たんぱく質」をしっかり摂ることが必要なのです。

○たんぱく質の必要量

日本人の食事摂取基準(厚労省)によれば、一般人の1日のたんぱく質推奨量は、成人で体重1kgあたり約1.0gです。フットボール選手の場合はその2倍、体重1kgあたりおよそ2gが目安と考えています。体重80kgのフットボール選手ならば、1日に160gのたんぱく質が必要というわけです。

○たんぱく質を多く含む食品

たんぱく質を含む主な食品は、肉・魚・卵・大豆製品などの「おかず」と、牛乳やヨーグルトなどの「乳製品」です。例えば、卵1個のたんぱく質は約6gなので、80kgの選手が1日に必要なたんぱく質を摂るためには、卵だけなら約27個。豚もも肉なら100gに含まれるたんぱく質は約21gなので、豚のしょうが焼だと910人前になります。このようにフットボールをしている人が自分に必要なたんぱく質を毎日しっかり摂るのは、よほど意識しないと難しいことがわかりますよね。そこで、まずは“毎食おかずを2品(または2人前)”食べることから始めましょう。

また、たんぱく質を多く含む食品は、同時に脂質も多く含むものがあります。脂質は5大栄養素の一つであり、カラダにとって必要な栄養素ですが、摂り過ぎは体脂肪の増加につながりますので避けたいものです。そこで、同じ豚肉でも「バラ肉」より「もも肉」など、脂の少ない部位を選んだり、「湯通し」や「網焼き」など調理法を工夫したり、また、肉・魚などの動物性食品と豆腐・納豆などの植物性食品を上手に組み合わせるなどして、「高たんぱく・低脂質」の食事になるように意識することも大切です。


1)牛肉

脂肪の少ない「赤身肉」がおススメです。もも肉やヒレ肉などは脂肪が少なく、反対にサーロインやひき肉は脂肪が多いので要注意。また、牛の赤身肉には「ヘム鉄」という鉄も含まれています。ヘム鉄は、ほうれん草などの植物性食品に含まれる「非ヘム鉄」と比べ、鉄の体内への吸収率が高いのが特徴です。

2)豚肉

牛肉と同じく、もも肉やヒレ肉が低脂肪でおススメです。豚肉は牛肉や鶏肉に比べ、ビタミンB1を多く含むのが特徴。ビタミンB1は、ごはんやパン、果物などに含まれる炭水化物(糖質)がエネルギー源として使われるのに必要な栄養素です。

3)鶏肉

鶏肉は皮と皮下脂肪を取り除けば、多くの部分が低脂肪です。中でもささみには脂肪がほとんど含まれていません。比較的脂肪の多いひき肉でも、牛肉や豚肉と比べるとその量は約半分です。しかし、牛肉の鉄や、豚肉のビタミンB1のような、その他の微量栄養素は少ないです。

4)魚介類

一般に、白身魚の方が低脂肪です。赤身魚でも、まぐろの赤身などは脂肪が少なく鉄も含まれるのでおススメです。いか・たこ・えび・かに・貝類は全般に脂肪が少なく、あさり・しじみ・ムール貝などの貝類は鉄も多く含んでいます。

5)卵

卵は「完全食品」と呼ばれるほど、良質なたんぱく質をはじめビタミンやミネラルを多く含む栄養価の高い食品です。卵白はたんぱく質が多く、脂肪をほとんど含みません。コレステロールを気にする人もいますが、特別に医師から指示された人でない限り、112個食べても問題なく、食事のレギュラーとしてむしろ毎日食べて欲しい食品です。

6)大豆製品

豆腐・納豆・おからなどが高たんぱく低脂肪です。生揚げや油揚げ、がんもどきなどは油で揚げて作られている分、脂肪の量が多くなります。大豆はカルシウムなどのミネラルも含み、納豆にはビタミンB2も多く含まれています。また、大豆たんぱくはコレステロールを低下させたり、脂肪分解を助ける働きが注目されています。さらに、植物性色素の一種である「イソフラボン」という成分には抗酸化作用があり、女性ホルモンに似た働きをするともいわれています。

7)乳製品

乳製品の最大の特徴は、手軽にたんぱく質と一緒にカルシウムも摂れることです。牛乳・ヨーグルト・チーズ・生クリームなどがありますが、生クリームやチーズは全般に脂肪が多いので注意しましょう。低脂肪・無脂肪タイプの牛乳やヨーグルト、カッテージチーズなどがおススメです。

○プロテインパウダーの有効活用

“たんぱく質の必要量”で述べたように、フットボール選手に必要なたんぱく質を食事だけで摂るのはなかなか難しく、どうしても不足する傾向があります。炭水化物(糖質)100%の砂糖類、脂質100%の植物油などと比べて、たんぱく質100%の食品はなく、高たんぱくといわれる肉や魚でも含有率はせいぜい20%程度。そこで、たんぱく質を補うサプリメントとしてプロテインがあります。

基本となる栄養フルコース型の食事を土台として、たんぱく質の不足分を食後にプロテインで補うのもたんぱく質を十分に摂る方法の1つです。特に、朝食は「おかず」が不足しやすいため、朝食後にプロテインを飲むことで朝から十分なたんぱく質を摂ることができます。

プロテインは、付属のザバスプロテインスプーンすり切り23杯(約1421g)を300500ml程度の牛乳や水で溶かして飲みます。

また、飲むタイミングは、食後のほかに、運動後(30分以内)、おやすみ前(1時間前くらい)がおススメです。

運動後は、成長ホルモンの分泌が活発になり、運動でうけた筋肉のダメージを修復しようと体内のたんぱく合成が盛んになります。そのため筋肉の再生も速く、カラダづくりが効果的に行われるからです。

筋肉をはじめとするカラダのさまざまな組織は、寝ている間に成長ホルモンが分泌されて、修復したり成長するので、睡眠時間の確保とともに、おやすみ前(1時間前くらい)に飲むのも良いタイミングです。

しかし、プロテインを飲み始めたからといって、すぐにカラダつきや体重に変化があるとは限りません。なぜなら、体格や食生活、トレーニング等により個人差があること、カラダづくりは毎日少しずつ行われているため、目に見える形で筋肉に変化が現れるには時間がかかります。およそ3ヶ月は継続することをおススメします。

また、たんぱく質を一度に吸収できる量には限りがありますので、面倒だからといって、スプーン大盛何杯ものプロテインを一気に飲んでしまうと、カラダの負担にもなりかねません。1回に飲む量は付属のザバススプーン23杯(約1421g)が目安です。たんぱく質の必要量の多い選手は、おかずの分量を増やしたり、間食を取り入れるなど、食事を改善することを第一として、プロテインは1回の量ではなく「回数」を増やすようにしましょう。

でも、あくまでプロテインは食事の不足分を補うもの。食事という土台がなければ本末転倒なので気をつけましょう。