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(第8回) 試合の日の食事

8:00 AM

フットボール選手のための栄養講座:試合の日の食事

○試合に向けての食事とは?!

みなさんは、「試合の日の食事」をどうしていますか? “コレを食べれば必ず勝てる”といった食品はなく、試合当日だけ食事を完璧にしても勝てるわけではありません。試合に向けては、毎日のバランス良い食事の積み重ねが大切です。ただし、本番で力を発揮するための食事のポイントはあります。これをベースに、自分にベストな方法を見つけ、勝利に近づきましょう!

○試合前日のポイント

試合前日は、エネルギー源となるグリコーゲンを筋肉と肝臓に十分に貯えておく必要があります。ですから、どの種目においても脂質は控えめにして、炭水化物(糖質)を多く摂るようにしましょう。同時に、試合に向けての緊張感やストレスが高まるなか、体調を整えるビタミンCも必要です。

「栄養フルコース型」の食事でいうならば、①主食と④果物を多めにし、②おかず・③野菜・⑤乳製品は少なめにしましょう。

天ぷらやカツなどの揚げ物、こってりソースの料理、生クリーム・バター・マヨネーズをたっぷり使った料理など脂質が多く消化に時間のかかるもの、刺身などの生もの、腸内にガスが溜まりやすくなる食物繊維の多い根菜類などは極力控え、普段から食べ慣れている食品を選ぶようにすることも大切です。

また、マラソンやトライアスロンなどの持久系競技のトップ選手の多くは、目標とする試合の3日前から食事中の炭水化物(糖質)の割合を増やし、エネルギー比70%(通常練習期は5060%程度)の高炭水化物(糖質)食に切り替えることによって、筋グリコーゲンの量を増やしていく、という特殊な食事法「グリコーゲンローディング」を実践する場合が多いです。連日試合が行われる場合は、筋グリコーゲンが消耗するので、同じ食事法をおススメします。

そして、前日の夕食はなるべく早めに済ませるようにし(就寝3時間前)、リラックスして深く十分な睡眠を取れるように心がけましょう。

○試合当日のポイント:試合前

試合開始までにできるだけエネルギーを貯えておけば、パフォーマンスの低下を最小限にすることができます。そこで試合当日も、前日と同様に主食と果物中心の高炭水化物(糖質)食を摂りましょう。また、試合開始時間から逆算して、34時間前までに食事を済ませることもポイントです。試合開始時間などによって一度に食べられないようであれば、食事回数を分けるなど食べやすい方法を工夫しましょう。“試合開始時には、胃の中は空っぽ、でもエネルギーは満タン”という状態がベストです!

また、試合開始34時間前に十分な食事を済ませても、試合時間が長いため、途中で頭とカラダのエネルギーが切れ、スタミナや集中力が落ちてきてしまいます。そこで、試合開始時間や試合と試合の間の時間を考慮して食べるものを選び、上手に栄養補給をするコツをマスターしましょう。〔試合開始までの時間と食べ物の関係〕を参考にしながら、それぞれの場面に合わせて調整してみてください。

○試合当日のポイント:試合中

【水分補給】

試合中は、汗から失われた水分とミネラルを補うだけでなく、スタミナを維持するために糖質も同時に摂取できるスポーツドリンクがベストです。ただし、糖分濃度が濃いものは体内への吸収速度が遅くなるため、糖分濃度2.5%以下のものや、体液よりも低い浸透圧の「ハイポトニック」と表示のあるものを選ぶようにしましょう。また、適度に冷やしたドリンク(10℃前後)は吸収が速くおススメです。

試合中に水分補給ができるタイミングはポジションや選手個々によっても異なりますが、15分~30分おきにコップ1杯(200ml)程度の水分補給が目安となります。のどが渇いてから一気に多量の水分補給をしてしまう選手がいますが、のどが渇いたと感じた時にはすでに脱水が始まっており、一度にたくさん飲んでも吸収されにくい状態になっています。ですから「のどが渇く前に、こまめに、少しずつ」飲むことを心がけましょう。また、試合中に脱水になるのを遅らせるために、試合開始30分くらい前にコップ12杯(250500ml)程度の水分を補給しておきましょう。

特に夏場に多いアクシデントに、熱中症や足のつり、筋けいれんなどがあります。それは、暑熱環境下での長時間の運動によって、熱がうまく発散できずに体温調節に障害を及ぼしたり、水分補給の失敗から体内の水分とミネラルを多量に失い、筋収縮に影響を与えるからです。中でも防具によって熱が発散されにくいフットボールは熱中症に対して、より意識をして対策を講じなくてはなりません。脱水による頭痛やめまいなどパフォーマンスの低下や、ひどい場合には死に至ることもありますので、こまめに水分補給を行い、さらに濡れタオルでカラダを拭く、こまめにインナーウェアを着替えるなど、体温を下げる対策によりアクシデントを未然に防ぎましょう。

【栄養補給】

試合中やハーフタイムなどにエネルギー補給を行う場合は、できるだけ速やかに吸収されパフォーマンスに影響を及ぼさない、ということを条件に考えます。エネルギーゼリーやエネルギードリンク、タブレットのように運動中でも摂取しやすい形態で、デキストリンやブドウ糖を主原料としたものが理想的なので、このようなサプリメントを有効活用しましょう。

○試合当日のポイント:試合後

試合が終わってホッとすると、それまで意識していた栄養補給のことを忘れがちですが、いち早く疲労を回復させ、次の試合に備えるためには、ここでの栄養補給がとても重要になります。

激しい運動の後は筋グリコーゲンが消耗し、要求量が高まるため、このタイミングを利用して炭水化物(糖質)を摂取することが、回復を速めるコツです。ここで速やかな炭水化物(糖質)補給ができないと、筋肉や肝臓のたんぱく質を分解し、アミノ酸から糖質をつくろうとします。つまり身を削る作業が行われるため、結果的に回復が遅れてしまいます。そうならないためにも、試合直後は時間を空けずに、できるだけ早いタイミング(30分以内)で炭水化物(糖質)を補給する必要があります。またこの時、同時にたんぱく質(糖質:たんぱく質=31)を摂取することで、より筋グリコーゲンの回復が速まります。

そこで、果汁100%ジュースとハムやチーズのサンドイッチ、牛乳とバナナなどの組み合わせができるようであれば、シャワーや着替えを済ます前に補給しておきましょう。もっと手軽に栄養補給をしたい場合は、プロテインやゼリードリンクなどを組み合わせる方法がおススメです。

ここまでが、運動によって壊れたカラダを回復モードに移行するための切り替えの栄養です。でも、これだけでは十分な栄養補給にはならないので、この後は「栄養フルコース型」の食事をベースとしたバランスの良い食事をおいしくいただき、疲れたカラダをゆっくり休めてください。

最後に、ここまで述べてきた試合調整期の栄養戦略や当日の食事法には個人差がありますので、大切な試合でいきなり実践するのではなく、必ず練習試合などを利用して試してみてください。そして、自分にとってベストな方法を見つけてくださいね!