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(第10回) からだづくり講座 Session9 筋肉の柔軟性を高める(保つ):ストレッチング

12:01 AM

ストレッチング

からだづくりをする、というテーマでお話をしてきましたが、筋肉はその長さを縮めて力を出しますが伸ばされるという点では受動的になります。無論正しくトレーニングすることで可動域は向上しますが、可動域のアンバランスがあったりすることで、正しくトレーニング出来ないこともあります。このような機能的な問題を解決するために、ストレッチングという関節の可動域を広げ、筋肉や結合組織を適切に伸ばしてやる事が有効です。中でもスタティックストレッチングという筋肉をゆっくり引き延ばすようなストレッチングは比較的安全で、効果的なものがあります。関節についている筋肉をリラックスさせて、痛みのない範囲で軽い引き伸ばされ感を感じることが出来る感じで伸ばすのがポイントです。
また、トレーニングや練習後にこのようなスタティックストレッチングをすることでリラックスしやすくなり筋肉の過緊張や疲労からの回復に効果的であるとも言われています。
反面、このようなスタティックストレッチングを過剰に運動前に行うことに関してはその効果は必ずしもポジティブなものだけではありません。これに関しては非常に個人差があるのでやる、やらないは試してみる必要があります。
ストレッチングは基本的には自身のストレッチ感により動かす範囲をコントロールする必要がありますので、基本的には誰かに伸ばしてもらうのではなく、まずは自分で伸ばせるようになる事が非常に重要です。また、それぞれの関節とその動作に関わる筋肉は複数の関節をまたがっていることが多くあります。言い換えればある関節についている筋肉をストレッチしようとすると他の関節の動きに影響が出て、結果的に伸ばしたい筋肉が伸ばせない可能性が出てくるわけです。通常ストレッチしたい筋肉は緊張して短くなっている、若しくはしなやかさが欠けていることが多いわけで(だからストレッチしたいと感じる)そうなるとその筋肉をストレッチせずに、その両端に影響を与えている筋肉をを伸ばすことなりがちです。そうなると目的が果たされないばかりか、違う筋肉が想定外に伸ばされ過ぎて傷害の原因になったりすることもあり得るのです。だから、ストレッチでは固定すべきポイントをしっかり押さえるのが筋肉を伸ばすために最も重要なポイントの一つなわけです。

臀部のストレッチ1,2
四つん這いになり、足をクロスさせて片足を後ろに引き出します。この時後ろ足は真っ直ぐにして、上体は倒しすぎないようにします。ちょうど腰を外にずらして正座をするような感じです。曲げている前足のお尻の部分にストレッチがかかります。
この状態から脛を横向きにして身体に対して垂直に近づけると、お尻の別の部分がストレッチされます


<臀部のストレッチ1>

<臀部のストレッチ2>

股関節屈筋群のストレッチ
モモ前の付け根の部分のストレッチです。片膝立ちになり、身体を起して後ろ足体の膝に体重を残しながら腰を前に押し出します。さらに手を上に上げると大きなストレッチを得ることが出来ます。背中を反りすぎないように気をつけましょう。


<腹筋群のストレッチ>

ハムストリングスのストレッチ
モモ裏の部分のストレッチです。片膝立ちになり、お尻を引きながら前足に体重を載せます。この時つま先を顔に近づけるようにします。身体を倒すのではなく、お尻を引く感じが重要です。強引に伸ばすのではなく、ゆっくりリラックスして伸ばしてゆきましょう。


<ハムストリングスのストレッチ>

ヒラメ筋のストレッチ
ふくらはぎの下の部分のストレッチです。片膝立ちになり、前足に体重を乗せながら腰を前に押し出します。この時踵が浮かないようにして脛が前に倒れるようにします。脛を前に倒すときは上体も前傾させます。但し背中を丸めないように気をつけましょう。このストレッチはアキレス腱周辺もストレッチされますが急激に行うとケガの原因になりますのでゆっくりと行いましょう。


<ヒラメ筋のストレッチ>

内転筋群のストレッチ1,2
四つん這いになり、膝と膝の間を開き、足の裏を合わせます。その状態からゆっくりと腰を前に押し出しながら身体を起こします。この時背中を反りすぎないように気をつけましょう。足の開きを徐々に広げながらゆっくり伸ばしてゆきましょう(その1)。


<内転筋群のストレッチ1>

その1の状態から脛を平行にして、今度はお尻を後ろに引き出します。この時おしりが上に上がってしまわないようにしましょう。膝に痛みが出るときはストレッチを緩めるか、中止しましょう。


<内転筋群のストレッチ2>

腹筋群のストレッチ
上体そらしのような形のストレッチです。うつ伏せの状態から、尻に力を入れて地面に押し付け、そこから徐々に腕を使って上体を押し上げます。特にみぞおちから上が上がると良いでしょう。腰だけでなく背中全体が反るようにストレッチします。みぞおちを前に押し出すように行い、お尻の地面への押し付けが解けないようにしましょう。腰などに痛みが出る場合は中止しましょう。


<腹筋群のストレッチ>

腰のストレッチ
四つん這いから、背中を丸めながら上に押し上げます。リラックスしながらゆっくり背中全体から腰が伸びるようにしましょう。腹筋群のストレッチと交互に行うのもよいでしょう。この時は、動作を急激にやらず、ゆっくりと行うことに特に注意して行いましょう。


<腰のストレッチ>

モモ前のストレッチ
横向きに寝て、下の足の甲か足首をつかみ、後ろに引いて踵をおしりに近づけます。この時上の足の膝を胸に近づけるとより大きなストレッチが得られます。膝の痛みがあって足が掴めない人は壁などに下の足の甲を当てて行うとよいでしょう。関節に痛みが出る場合は無理して伸ばさず、痛みの出ない範囲で行いましょう。


<モモ前のストレッチ>

ふくらはぎのストレッチ
腕立ての姿勢から片足立ちになり、手の位置を足に近づけながらお尻を上げてゆきます。この時、ゆっくりと踵を地面に近づけるようにします。絶対に急激に行わないようにしましょう。


<ふくらはぎのストレッチ>

胸のストレッチ
肩の付け根の前から胸の部分のストレッチです。ガッツポーズの姿勢を取り、前腕を柱などに押し付けます。そして、上体全体を前に押し出すようにストレッチします。
さらに腕を伸ばして柱を掴んでストレッチすると上腕の部分も含めて大きなストレッチを得られますが、可動域が狭い人が行うと肩に痛みが出ることが有るので気をつけましょう。肩関節は非常にデリケートですのでゆっくりと痛みの出ない範囲でストレッチをすることが重要です。


<胸のストレッチ>

背中のストレッチ
背中の特に横の部分のストレッチです。柱などを片手でつかみ、同じ側の足を後ろに大きく引きながら伸ばしてゆきます。できるだけ手と足が離れるように伸ばしてゆきます。足を完全に後ろに引いたら、今度は両足を後ろでクロスするように足を移動して行きます。腰の部分だけが引き伸ばされすぎて、痛みが出ないようにゆっくりコントロールしながらストレッチしましょう。


<背中のストレッチ>

スタティックストレッチングは比較的容易に正確に行うことが出来て有効なストレッチングです。特に練習後など、精神的にもリラックスしたほうが良い(リラックスは回復にも有効だと言われている)状況ではこれらのストレッチングは有効です。また、関節の可動域を適切に保つことは身体の機能を適切に保つのにも必要なことですので、時間が無いなどの理由で省略する、といったことがないようにしましょう。アメリカンフットボールはパワーのスポーツですがパワーを適切に発揮するには可動域が必要なのです。そして、筋肉が練習と練習の間で早く回復出来るようにストレッチングを有効利用しましょう!