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(第4回) 股関節を動かしながら体幹部を固定する技術を習得する:デッドリフト編

2:56 AM


セッション2のスクワットに続き今回はデッドリフトを紹介して行くことにします。デッドリフトは基本的にはシャフトを体の前にもち、バーの上げ下げをする種目です。股関節の大きな動きを必要とするので、臀筋やハムストリングスを強く使うエクササイズとしても知られています。この種目は単純に臀筋ハムストリングス腰などを強化する種目としてだけでなく、スクワットとは違いバランスをとりながら若干後方向に力を発揮するというエクササイズとしても非常に有効なのです。また基本的に両手でバーを握って支持するので、特に前傾したときに、肩甲骨の位置を保ちながら上体のニュートラルポジションを維持するというポイントに対してもストレスをかけ強化することが可能です。前回スクワットの章で押す力のバランスについてお話ししましたが、デッドリフトではバーを体の前に残して、後ろ方向に押す事で全体のバランスを取ります。逆に言えばこの種目で後ろ方向に押す力、すなわち減速力の強化ができるというわけです。

このような動きに直結するようなポイントも勿論ですが、Session1でお話しした支える力を増す為にも非常に重要なエクササイズです。バランスを取りながら急激に減速するには急激に前下方向に出力しながら股関節を曲げる必要があります。その際に上体は大きく前傾します。その前傾したポジションで安定性を保つ必要がでてくる訳です。

それでは実際のデッドリフトの動きに目を向けてみましょう。まずはここではRDLと呼ばれるローマニアンデッドリフトをまず見てみましょう。
親指を巻き付けた状態(サムアラウンドグリップ)でしっかりバーを握り、背骨をニュートラルに保ちます。

サムアラウンドグリップ(左)とサムレスグリップ(右)

そこから踵に力を入れながら、ゆっくり重心を後ろにずらす感じでお尻を後ろに引き、骨盤を倒してゆきます。このとき、体は前に倒しますが、感覚として重心をずらした結果倒れる感じで、腰を折るような感じではありません。前者のような感覚で行うと背骨が(腰の部分が)丸まりやすくなり、けがの原因になり、適切な出力が得られないため、好ましくありません。

背骨のニュートラルな状態が保てる状態で最大で状態が地面に対して30度近くになるまで(バーが膝の下にくるくらいまで)おろしてゆきます。ニュートラルな状態が保てない角度はその人にとっておろし過ぎなので好ましくありません。
背骨がニュートラルな状態ではそれを支える筋肉も正しいバランスで力を発揮しているはずです。従って一見してニュートラルに見えても極端に腰の部分が強く使われている感覚が出る場合は背骨の支え方が好ましくないということが言えます。
その人にとって可能な一番おろしたポジションまで下りたら、今度は逆にお尻を前に戻すように元の立ったポジションに戻してゆきます。
エクササイズを通して背骨の角度が変わらないようにしましょう。無理矢理姿勢を保とうとしてあごをあげすぎてしまうことは良くありますが好ましくない事ですのでやらないようにしましょう。
このように力を若干後ろ方向に加え押し出すデッドリフトは、結果として膝の動きが少なく、股関節の動きの大きなエクササイズになります。一番下のポジションでは体の全景も大きくなるので胴部を曲げる力に対してニュートラルな状態で体を支える力も鍛える事ができます。

それではこのエクササイズができるようになるための練習、そして、そのエクササイズのバリエーション(プログレッション)を紹介してゆきましょう。

エクササイズ説明

動きを学ぶ

骨盤前傾 (Session2参照)
ベンチをまたいで座った状態で体幹部をニュートラルな位置に保ち(Session 1参照)そこから出来る範囲で骨盤だけで前傾してゆきます。この時、足の位置を大体太ももの下になるようにしておきましょう。

グッドモーニング

骨盤前傾と同じように骨盤と上体を一体にして倒す(前傾させる)エクササイズです。(木などの)棒をバックスクワットのポジションで(Session2参照)支え、重心を後ろにずらしながら骨盤を前傾させます。この時上体と骨盤は立っている時と同じように一体になって動いてゆきます(腰や背中が曲がったり伸びたりしない)。踵に重心を移動させながらお尻を後ろに(下ではなく)つきだしてゆくと骨盤が倒れてゆきます。最初はなかなか倒す事が難しいですが、むりやり倒さずに骨盤と上体が一体になってニュートラルな上体を維持できる範囲で前傾してゆきます。この時、無理やり前傾させると腰が丸まったり、反り過ぎたりしてニュートラルな状態から外れたり、胴部をバランスよく支えられなくなりますので、無理せず行います。自分の範囲で前傾をしたら、逆に脛の角度を少し前に戻しながら、重心を前に戻して身体を起こしてゆきます。この時胸を起こすのではなく、あくまでもお尻を元の位置に戻すイメージで戻すとよいでしょう。過度に顎を上げて姿勢を制御しようとすると腰が反りすぎてニュートラルなポジションからずれてしまうので注意が必要です。地面に対して30度程度の前傾がニュートラルな状態で出来るようになるまで、重りは使わないで行いましょう。地面に対して30度程度の前傾が出来るようになったら、20kg程度までの重りを使ってもよいでしょう。そして、この動きができるようになったら次のステップでRDL(ローマニアンデッドリフト)を実施しましょう。

膝の高さからのリフト
デッドリフトの基本的動作を学んだら、まずは膝の高さからのエクササイズに取り組みましょう。

RDL(ローマニアンデッドリフト)

グッドモーニングと同様の動きをバーを手に持って行うエクササイズです。
親指を巻き付けた状態でしっかりバーを握り、背骨をニュートラルに保ちます。そこから踵に力を入れながら、ゆっくり重心を後ろにずらす感じでお尻を後ろに引き、骨盤を倒してゆきます。このとき、体は前に倒しますが、感覚として重心をずらした結果倒れる感じで、腰を折るような感じではありません。前者のような感覚で行うと背骨が(腰の部分が)丸まりやすくなり、けがの原因になり、適切な出力が得られないため、好ましくありません。特に下げていった時にバーを支える為に肩甲骨同士をしっかり引きよせておくようにしましょう。
背骨のニュートラルな状態が保てる状態で最大で状態が地面に対して30度近くになるまで(バーが膝の下にくるくらいまで)おろしてゆきます。ニュートラルな状態が保てない角度はその人にとっておろし過ぎなので好ましくありません。
背骨がニュートラルな状態ではそれを支える筋肉も正しいバランスで力を発揮しているはずです。従って一見してニュートラルに見えても極端に腰の部分が強く使われている感覚が出る場合は背骨の支え方が好ましくないということが言えます。
その人にとって可能な一番おろしたポジションまで下りたら、今度は逆にお尻を前に戻すように元の立ったポジションに戻してゆきます。
このエクササイズはデッドリフトの基本的エクササイズになります。まずはこのエクササイズをやりこんで見ましょう。

ハング・クリーンプル
クイックリフトと言われるエクササイズの一つの、クリーンというエクササイズの導入エクササイズです。ここではクリーンそのものについては触れませんが、そのエッセンスの一つである、プル、特に膝付近(ハングポジション)からスタートするハング・クリーンプルを説明します。このエクササイズは爆発的に出力をするジャンプのようなエクササイズです。しかし、しゃがみこんで飛び上がるジャンプとは違いアプローチジャンプのように踵よりに体重を乗せて骨盤を倒した状態から一気に飛び上がります。
基本的に行うことはRDLと大きく変わりませんが骨盤を倒した状態から脛の角度を戻す際にしっかり足裏全体で地面を踏み込み、速く強く重心を押し上げます。頭頂部が出来るだけ高い場所に速く行くようにイメージします。この勢いにバーを持っている腕が負けてバーが上がらず残らないように肩甲骨同士をしっかり寄せて、胸を大きく開いておきましょう。特に勢いのある動きをするエクササイズですので絶対に上半身を振り上げるように行わず、足で押し出すようにしましょう。バーを戻すときはゆっくり戻します。特に前傾ポジションにする動作はゆっくり行います。急激にバーを持って前傾をするとケガの原因になることがあるので避けましょう。重量にこだわらず、まずはシャフトだけで、速く高く飛び上がれるように意識しましょう。


フロアからのリフト
膝の高さからのリフトに続き、フロアからのリフトを行うには十分な可動域を確保しましょう。適切なテクニックで行えるようになるまでは、重量を増やさないでおこなうこと。

デッドリフト
フロアから持ち上げるデッドリフトです。これは上記のRDLと違い2つのモーションの組み合わせのような感覚で行います。まず、地面にあるバーを持つときにRDLの膝下まで行った時の上体の角度にしてバーを持ちます。この時点で足裏で地面を押します(Deadlift 1参照)。この際力が前方向に逃げていかない(つま先側に力を入れるポイントgあ移動してゆかない)ようにすることが重要です。このまま上体の角度を変えずに膝まで上体とバーを一体にして押し上げます。足裏全体から踵中心に力を加えながら(出力のポイントを後ろにずらしながら)地面を押し、上体をそのまま上げるのです(Deadlift 2参照)。そして、膝までバーが上がったらRDLと同様に上体の角度を変えながら体全体を押し上げます(Deadlift3参照)。背骨や上体のコントロールのポイントはRDLと同様ですが、特にスタートから膝までは上体の角度を維持する際に大きな姿勢が崩れやすく、支える力のバランスも崩れやすいので注意します。
この一連の動作が出来るようになるまで非常に軽い重量で練習しましょう。


クリーン・プル
ハング・クリーンプルと同様のエクササイズですが、スタートポジションはフロアからになります。デッドリフトと同様に膝の高さまでバーを持った上体を押し上げ、そこからハングクリーンプルと同様に爆発的に地面を押し、身体を押し上げます。バーを戻すときはゆっくり戻します。特に前傾ポジションにする動作はゆっくり行います。急激にバーを持って前傾をするとケガの原因になることがあるので避けましょう。重量にこだわらず、まずはシャフトだけで、速く高く飛び上がれるように意識しましょう。

片足でのリフト
膝の高さからのリフトがキチンと出来るようになったら片足でのリフトに取り組んでみるのも良いでしょう。両足で行うものと違い、下半身を中心に身体が回ってしまおうとする力もコントロールして行う必要があります。

SRDL シングル・ローマニアンデッドリフト

片足で立ち、立っている足の逆側の手で棒などを持って、体重が立っている足の小指側にずれないようにバランスをとります。
立っている足と同じ側の手でダンベルなどの重りを持ちます。RDLと同じように骨盤を倒すようにお尻を押し出しますが、その際、浮いている側の足も一緒に後ろに押し出します。足裏から頭までを一直線にして踵を後ろに蹴りだすような感覚です。この時背中を反りすぎずにニュートラルな状態を維持するようにします。
地面に付いている足の働きとしてはほとんどRDLと同様ですが、上体が回転したり左右にずれたりしないようにコントロールすることが重要です。

テクニックガイドライン
身体を前傾するときも背骨はニュートラルな上体に保つ(上体と骨盤は一体になって前傾する)
前傾している時は身体を起こしておくことだけでなく全体的に締め付けておくようにする。

RDL
バーの高さが膝くらいまでは骨盤を後ろに押し出すようにしてバーを下ろす。(重心が踵に寄る)
上げるときはその反対に重心の位置を前に戻しながら上げる。

フロアからのデッドリフト
フロアから上げるときはバーが膝くらいまでは骨盤を後ろ上方に押し上げるように上げる。(重心が踵に寄る)
膝から上ではは少し重心を前に戻しながら押上げる。
下ろすときはこの反対を行う。

特にフロアからのデッドリフトではモーションがバーの高さが膝辺りで切り替わるので注意が必要です。