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(第5回) からだづくり講座 Session4 スプリットスクワット

1:44 PM

セッション3までは両足を揃えて(左右同時に)使う運動を紹介してきましたが、今回は左右が違う動きをするものを紹介してゆきます。実際に身体を動かして自分の位置を変化させる場合、特に垂直ではなく地面に水平に動く場合、左右別々に角度をもって出力することが必要になります。セッション3の最後のエクササイズで紹介したような片足で出力するようなエクササイズを行うことでさま座な方向への出力を鍛えることが出来ます。ここではスクワットように身体を押し上げるエクササイズを片足で行うスプリットスクワットと、そこから前後への移動の為の出力をするランジを紹介してゆきます。
なお、ここでは、足の位置が変わらないものを(スプリット)スクワット、足の位置が移動するものを〜ランジと称していますが、これらを区別しない場合もあるので注意しましょう。

さて、基本的なスプリットスクワットのテクニックについてですが、セッション2で紹介したスクワットのテクニックと同じ目的なのでテクニックの要素に関しても非常に酷似しています。但し、基本的に出力する足が前足一本であるという点はスクワットと明確に違う点です。写真にあるように前足の脛と上体が平行になるように出力します。その際に足の裏に均等に力が加わるようにします。特にこの点は後ろ足を使ってバランスをとることができるスプリットスクワットでは重要です。なぜならたとえバランスを崩しても後ろ側であるなら後ろ足でバランスをとってしまうので、そのエラーが動きとして見えにくい、感じにくい事があるからです。

逆にランジという重心位置、足の接地位置が変化するエクササイズでは出力のバランスが変化します。前方向に出力するバックワードランジでは脛は通常のスプリットスクワットよりも前に倒れそれに伴い、接地している足の出力位置もよりつま先よりになり、地面に対する骨盤の角度も急になります(この場合は脛骨と骨盤の平行関係は余り崩れません)。一方後ろ方向に加速するフォワードランジでは地面につくときに踵からつき、つま先を上げる力を発揮しながら膝と股関節を曲げてゆきます。この時は前に加速するときと比較して膝関節は股関節ほど大きく曲がらず、結果として脛もほとんど前に倒れません。このようにランジでは加速したい方向によりその出力の角度を変える必要があります。足を付く位置を買えるだけではうまくいかないわけです。

エクササイズの紹介

スプリットスクワットの技術を身につける

スプリット骨盤前傾
両足でのスクワットの場合と同様、重心のある位置を足の真上に持ってくるために骨盤を前傾させます。この時に脛の角度と骨盤、上体の角度を平行にして重心の場所を探してゆきます。骨盤の角度を買えずに背中を丸めることがないようにしましょう。

<正しい姿勢>
骨盤後傾
<骨盤後傾>
ステップアップ
前述の骨盤前傾脛前傾のポジションを前足をボックス(ベンチ)に乗せてしっかり重心の位置を足の上に移動します。そこから上体を真上(若干前方向)に押し上げます。そして、立ち上がったら元の位置に戻ります。やはり、脛と上体は平行に推移し、脛が倒れすぎたり、骨盤が前傾できないのを上体を丸めたりしてバランスを取らないようにします。特に下ろすときに脛と上体の角度が平行にならないと膝に過度な負担がかかったり、後ろ足に急激に加重して腰の負担を無用に増やしてしまうので注意しましょう。
ボックスに立ち上がるときに浮いている足のモモを上げるバリエーションもあります。このエクササイズを行う場合は振り上げた時に身体が後傾しないように気をつけましょう。
ステップアップ
<ステップアップ>

スプリットスクワット
しっかり前足に体重が乗った状態からスタート(最初のスプリット骨盤前傾のポジション)して、スクワットしてゆきます。前足に体重が乗ったまま後ろ足の膝を地面に近づけるイメージです。この時もやはり脛と上体の関係がほぼ平行に推移するようにします。下ろすとき、上がるときに地面からの出力が前や後ろに抜けてしまうような状態(脛が前傾+骨盤がそこまで倒れていない、脛が立った状態で骨盤が寝ている)にならないように注意して行います。特に出力が後ろに抜けてしまった時でもバランスをとり続けることが出来て問題に気づかない事があるので気をつけましょう。キチンと真っ直ぐ真上に加速して、そして真下に落ちるように股関節と足首のコントロールをしましょう(特に膝が前に抜ける、足裏にかかっている力が前に移動する事がないように気をつける)。後述のスプリットスクワットジャンプのような爆発的な動作では特にこの点をシビアにチェックしましょう。
重りは背中(バックスクワットのように)に背負っても、フロントで持っても構いません。また、両手でダンベルを持って行うことも可能です。まずはバーベルを背中で持って行ってみるとよいでしょう。
スプリットスクワット
<スプリットスクワット>

ブルガリアンスクワット(後ろ足上げスプリットスクワット)
通常のスプリットスクワットを後ろ足をボックスやベンチの上に乗せて行う。後ろ足は基本的に爪先立ちでほとんど体重をかけずにおきます。そしてこの状態でスプリットスクワットを行います。基本的なイメージは通常のスプリットスクワットと同様ですが、後ろ足の位置が挙上されているために前足はより足首が曲がった位置(背屈した位置)で出力します。通常のスプリットスクワットと同じポイントに注意して行いましょう。このエクササイズを行うときは後ろにバーを持つとバランスを崩す可能性が有るのでまずはダンベルでおこなうと良いでしょう。
ブルガリアンスクワット
<ブルガリアンスクワット>

バックワードランジ
このエクササイズは基本的にステップアップに酷似したエクササイズですが、平地で行うものになります。段差が無いので後ろ足のコントロールが非常に難しくなります。前足の脛の角度を前傾させつつ後ろ足を後ろに引きながら骨盤と上体を倒してゆきます。足を後ろに下げるときに上体も後継してしまわないようにします。そして、後ろ足が着いたら同じように前に足を戻してゆきます。通常とスプリットスクワットよりも大きく前に加速する形になるので脛の角度、出力の角度は通常のスプリットスクワットよりも急に(脛の角度が)なります。前足の膝の位置が殆ど変わらないで動くイメージになるとよいでしょう。
バックワードランジ
<バックワードランジ>

フォワードランジ
減速に着目したランジエクササイズがフォワードランジです。足を前にステップし、そこでスプリットスクワットしてまた、元の位置に戻ります。しかし、ここで通常のスプリットスクワットやバックランジとは大きく違うポイントが有ります。設置した時に後ろ方向に加速したいので、脛は通常のスプリットスクワットよりもかなり起してほとんど直立から後傾くらいになり、出力の方向に伴い拇指球ではなく、踵を押し出すように出力します。また、通常よりも骨盤を大きく倒します。従って脛と、上体は平行にはなりません。この状態でも足を蹴りだすのではなく、膝と股関節を曲げてクッションしながら受け止め、そこから押し返して元の位置に戻ります。ここで脛の角度が前に倒れすぎたり、つま先荷重で押し返すと、出力が骨盤に通じずに上体を振って戻るような形になりのでそうならないように気をつけましょう。また、骨盤が大きく倒れた状態で骨盤と脛の角度が大きく違う状態で押し出すため大きな曲げる力が胴体に加わります。それに負けずに上体のニュートラルな上体を保って行ってゆきましょう。
フォワードランジ
<フォワードランジ>

スプリットスクワットジャンプ(シングル、片側連続)
基本的にスプリットスクワットと同じ形で爆発的にジャンプします。飛び上がる前にしっかり腕を後ろに持ってきて肘を曲げた状態で腕を振り上げ、飛び上がります。そして着地するときには、同様に腕を素早く引き、元のポジションに戻します。
まず1回1回ジャンプして毎回同じポジションに戻れるようになったら連続ジャンプを行います。連続では多くても6回程度のジャンプにしておくとよいでしょう。着地姿勢と力にかかり方がスプリットスクワットと同じように足の裏全体で真っ直ぐ押せることを大前提にシビアに行いましょう。少しでも着地にエラーがあるとケガの原因になります。

スプリットスクワットジャンプ(シザーズ)
注意点はシングル、片側連続のスプリットスクワットジャンプと同様ですが、このエクササイズでは空中で足を入れ替えます。こうすることで、よりパワフルに押し出す必要が生まれるだけではなく、スプリントなどの動作での出力向上により直接的に寄与する事ができる可能性があります。

 

[チェックポイント]
共通チェックポイント
背骨をニュートラルに保つ
力が必ず地面から重心方向に向かっているようにする(膝関節や足関節で外に逃げないようにする)

スプリットスクワット
地面に対して足をフラットに(親指、小指、踵で包み込むように)押す。
脛を上体に平行にする。
出力が真上への加速に使われるようにする。

バックワードランジ
地面に対して足を斜め後ろ方向に(親指、小指、土踏まず位で)押す。
脛を上体に平行にする。
出力が前上への加速に使われるようにする。

フォワードランジ
地面に対して足を斜め前方向に(踵、土踏まず位で)押す。
脛を地面に対して垂直にアプローチする。
股関節を大きく曲げる。
出力が後ろ上への加速に使われるようにする。

両足のスクワットがある程度技術的に出来るようになったらスプリットスクワットを行うことはそれほど難しいことではありません。しかし、キチンと真っ直ぐ身体を押し出すようにするようにキチンと動作する必要があります。最初は重りを少し増やすと身体が横にふらふらしたりするかもしれません。そういう時にはまずは軽い重量でしっかり安定的に出来るようになってから重量を増やすようにしましょう。
ステップアップを先に行って、しっかり前足に乗る感覚を身につけてからスプリットスクワットを行いましょう。

スクワット、デッドリフト、スプリットスクワットのトレーニング例

キチンとエクササイズが行えるように練習する時
3セット×10〜15回(フォームが絶対に崩れない負荷で)x週3回程度
これをそれぞれ1種目ずつ行うところから始めましょう。

テクニックを身につけたらまずコレ!
スクワット、デッドリフト
5セット×5回(少しずつ重りを増やしてゆく。最後に一番重くなるように)2分間隔で。
スプリットスクワット
3セット×10回 左右連続で1分間隔で。(バランスとテクニックを崩さない重量で少しずつ増やしてゆく)
週3回行う

すべてのセットを問題なく行えたら次回からターゲットの重量を5kg増やしてみましょう。

トレーニングを続けて疲労感が続いたり、持ち上げる重量が上がらなくなってきたら、週に3回を2回に減らしてみましょう。更にそれでもきつい場合は2週間で3回に減らしてみましょう。

スクワット、デッドリフト、スプリットスクワットはSession1の体幹の安定性確保の技術を生かして行うことでより強い支える力、加速する力を身につける事が出来るエクササイズです。しっかりとしたテクニックで取り組んでゆきましょう!