(第9回) からだづくり講座 Session8 身体に対して垂直に押し出す(水平に押し出す)
身体に対して垂直に押し出す(水平に押し出す)
ウェイトトレーニングの中で最もポピュラーな種目の一つがベンチプレスと呼ばれるベンチに横になってウェイトを押し出すエクササイズです。このエクサササイズを含め押し出しに主に使われる胸だけに注目が行きがちですが、肩甲骨や姿勢を保つための筋肉もまた強く使われます。相手の事を押したりする為にはまず自らが撓まない必要があるので、これらのエクササイズに取り組むことで押し出す力が増すだけでなく様々な状況で身体を支えながら押す力を強化することが出来るのです。
プッシュアップ(腕立て伏せ)
うつ伏せの状態から両足を遠くにまっすぐ押し出すようにしてつま先で地面を押し出します。この姿勢はSession1で紹介したプローンプランクと同様です。その状態で腕を体に対して垂直に押し出します。この時の手幅は肩幅程度を基本に行いましょう。しっかりと下半身で押し出して、胴体をニュートラルな位置に保つことができれば、この時頭から足先まが一直線になっているはずです。体を押し出す時には背中が丸まらずに胸が広がった状態で押し出すようにしましょう。また押し出す過程で腰が落ちたり上がりすぎたりしないようにしましょう。頭と視線も重要なポイントです。押し出す過程で頭が下がったり、逆に上げすぎたりしないようにしましょう。頭が下がっている時は肩甲骨のあたりの背骨が丸まり過ぎていることがあるのでまずはそこを確認しましょう。
これらの状態を維持してコントロールしながら体を一体にして押し出して上下させます。手幅を広くし過ぎると肩関節に過大な負担がかかる可能性があるので気をつけましょう。
<プッシュアップ>
<プッシュアップ エラー1>
<プッシュアップ エラー2>
プッシュアップ+首
Session1で紹介したプローンプランクの首に負荷を加えたもののバリエーションです。プッシュアップ(プローンプランク)の姿勢で後頭部を真下に軽く押さえてもらい、正しい姿勢を維持しながらプッシュアップをします。押し出す時に背中が丸まり、頭が非常に下がりやすいのでしっかりと胸を張ってできる負荷で行いましょう。アメリカンフットボールにおいて上半身で出力しながら首を含めた姿勢を維持をできる筋力は非常に重要なので上肢を動かさないでやる首のエクササイズで(Session1参照)あるていど安定性が保てる人は是非行なって欲しいエクササイズです。Session1でも述べましたが正しい姿勢を維持できることが何よりも重要なので、絶対に首のポジションが正しい位置で保てる範囲の負荷で行いましょう。フォームが崩れた状態では絶対にエクササイズを続けずに負荷をコントロールして行うようにしましょう。
<プッシュアップ+頸部伸展>
ベンチプレス
これはプッシュアップとは逆にベンチに仰向けに横になり地面に足をつき、重りを押し上げるエクササイズです。まずは5ポイントコンタクトという身体の5点で身体を支えます。この5点とは後頭部・肩甲骨・殿部・右足・左足です。そしてバーをプロネイテッドグリップ(手のひらを足の方に向けたグリップ)で肩幅の少し外をで握ります。バーベルを、ほぼみぞおちの少し上の高さ(胸骨の下)で、コントロールしながら下ろします。この時痛みが無ければ胸までゆっくり下ろす。手首を固定して前腕と床が90度になるようにする。そしてそのまま元の位置まで押し戻します。動作の切り返しの際、胸では”絶対に”バウンドしないようにしましょう。エクササイズ中は基本的に胸をはり、肩甲骨同士が寄せあって肩が耳に近づかないようにし、かつ、胴体はニュートラルな状態を保つようにします。
肩の関節は非常にデリケートです。これはケガしてみないとわからない(ケガしてほしくない)ところですが、丁寧に行って欲しいエクササイズです。可能なら補助者を付けて行うようにしましょう。
(NSCA Japanエクササイズ資料参照)
<ベンチプレス>
ベンチプレスの補助
ベンチプレスの補助は行うこと(可能性があることは3つです)。リフターのラックオフ(バーをラックから持ち上げる態勢に持っていく)のアシストをする、同様にバーをラックに戻すアシストをする、そして持ち上がらないウェイトをコントロールしながら一緒に持ち上げる、この3つです。
デッドリフトの容量で出来るだけバーの真下に足をおき、姿勢を整えます。そしてリフターと一緒にバーをラックから離します。特に肩のあまり良くない選手が行う場合はこのポイントでしっかり支えてあげることで肩の負担がカナリ減ります。そしてラックに戻すときも同様です。
動作中の補助は出来るだけ最低限にし、何度も何度も補助付きで持ち上げないようにしましょう。基本的にリフターがもう少しで挙げられる程度の回数(通常は1〜2回)のみにします。特に初心者は補助者に頼って行わずに自分でキチンと挙げられる重量でトレーニングすることが重要です。
<ベンチプレスの補助>
インクライン・ダンベル・ベンチプレス
このエクササイズはベンチプレスをダンベルを用いて少し角度を付けて身体に対して垂直よりも少し頭よりに持ち上げるエクササイズです。
インクラインベンチを30度程度に設定し、ベンチプレスと同様に5ポイントコンタクトで身体を支えます。そしてベンチプレスと同じような軌跡でダンベルを動かします。場合によっては胸に近い位置では手のひらを少し内側に向けても構いません。胸に近い部分ではダンベルを離し、一番挙げた部分ではダンベル同士を近づけます。しかし、前腕の角度はベンチプレスと同様にほぼ地面に垂直に推移します。
ダンベルのエクササイズは左右が離れているためバーベルのエクササイズよりもコントロールが難しく力が発揮しにくい事が多いですが、反面、肩をナチュラルに使うことが出来、可動域も自然に広げやすくなることも多いので効果的なエクササイズでもあります。バーベルでのエクササイズに慣れたら是非加えてみて良いエクササイズです。
<インクライン・ダンベル・プレス>
ダンベル・ベンチプレスの補助
ダンベルベンチプレスの補助にはいくつか方法が有りますが、肘などではなく、できるだけダンベルに近い部分、すなわち手首や、可能ならばダンベルそのもの(内側を下から)支えると良いでしょう。まずは前腕の軌跡が地面に対して垂直に保たれるようにダンベルが広がりすぎたり内側に落ちてこないように支えることが第一です。その上で少しだけアシストをしてあげるとよいでしょう。
<インクライン・ダンベル・プレスの圃場>
サンプルプログラム
初心者
プッシュアップ
10回3セット
ベンチプレス
10回3セット
週3回
これらがきちんとしたフォームで出来るようになったら
ベンチプレス
5回5セット
プッシュアップ+首
5回5セット
を行いましょう。
更に、慣れてきたら
ベンチプレスとダンベル・インクライン・ベンチプレスを交互に行うのもよいでしょう。
正しいフォームで肩に痛みなどが出ない様に注意して行いましょう。また、重りが重くなってくると背中を反らせすぎてしまうことがあります。そうすると、背中のケガを起こす可能性があります。かならずニュートラルな姿勢で行うように留意して実施しましょう。
プッシュアップ以外のエクササイズはベンチに状態を支えてもらって行っています。ということはある程度姿勢が崩れてもそこそこの力を発揮することが出来るわけです。しかしながら、正しいフォームで身体を支え、コントロールしながら重りを上げることは安全性の面からも効果の面からも非常に重要なポイントです。肩の動きは肩甲骨と上腕の動きで作り出すリズムで創りだされています。このリズムを作り出すには肋骨と肩甲骨、腕が正しいポジションで動きを創りださなければなりません。その為には正しいフォームを学び、それを維持できる必要があります。トレーニングのテクニックを犠牲にして負荷を上げ過ぎることはしないようにしましょう!