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(第7回) からだづくり講座 Session6 オーバーヘッドプレス

9:00 AM

オーバーヘッドプレス

フットボールにおいて強い力を相手に伝えるにあたり、その出力の方向をできるだけ胴部の向きに近づけることが重要になります。これは足で作ったエネルギーを手に伝えるに為には同じ線上に入力と出力がある方が効率が良いからです。そう考えるとこの競技における技術(技術の目標)に即した出力を考えるとオーバーヘッドプレスの出力をあげることが効果的であると言うことができます。
オーバーヘッドプレスは肩甲骨を通じて肩関節を活用して頭頂部方向へ出力するわけですが、重りを上に持ち上げる動作をするにあたり、肩の柔軟性と胴部の固定力の低さにより、ニュートラルな位置から背骨がずれて行くことがあります。こうなると下半身からの出力が上手に上半身の末端にしっかりと伝わって行きません。そうなると重りを挙上しながら体が押し下げられる、という結果になります。これはフットボールで言えば相手を強く押しても自分がその押す力に負けて撓んでしまい結果的に相手に力が伝わらない、ということが起こるわけです。
従ってオーバーヘッドプレスのエクササイズで達成すべきポイントは重りを頭の上に押し上げながら体が撓まないように支える、ということになるわけです。
順番で行くと、まず肩甲骨を上下に動かしながら胴部を固定するところから始め、そこからひざまずいてプレス、立ってプレス、下半身を利用して爆発的にプレス、という流れで技術を習得してゆきます。

エクササイズ説明

シュラッグ
ここでは胴体の固定をしながら肩甲骨を上下させることを鍛えます。まず背骨はニュートラルに保ち、バーをからだの前でサムアラウンドグリップで持ちます。この時全身は地面に対して垂直な状態です。この状態で上体が丸まったり振れたりしないように注意しながら肩甲骨を上下させます。肩甲骨を前から後ろに回すのではなく、真っ直ぐ上下して、上げた時に肩が前に来ないようにします。上げ下ろしはコントロールされた速度で行い、特に下ろす時には重力に任せて下ろすのではなく、コントロールするようにしましょう。

<シュラングの良い例>

<シュラングの悪い例>

プレスエクササイズ

ニーリングオーバーヘッドプレス(両膝つきオーバーヘッドプレス)
両膝を地面につき、バーを顎の前あたりに両手で持ちます。肘を真下に向けておきます。この時肩甲骨が前に出過ぎないで背骨がニュートラルな状態であるようにします。下半身は股関節を伸ばす力を発揮しながら上体を支えます。この状態から真上にバーを押し上げます。挙上する時には前を見て、体が後ろに倒れ過ぎないようにします。背骨はニュートラルな状態を維持して、反り過ぎない様にします。特に挙上の動作をする時には上体が反りやすくなるので積極的に反らないように支えるようにします。そして、頭の上、耳の後ろの真上にあたりにフィニッシュするイメージで持ち上げます。身体から離れる方向に押し出さないように注意しましょう。このエクササイズは立って行うものよりも体の倒れ方や押し出しの方向が認識しやすいので、まずはこのエクササイズから行って、ここから立って行うものに移行したら良いでしょう。

<ニーリングオーバーヘッドプレスの良い例>

<ニーリングオーバーヘッドプレスの悪い例>

(スタンディング)オーバーヘッドプレス
前出のニーリングオーバーヘッドプレスを立った状態で行います。体の支え方、動かし方は同じです。押し上げる時には足裏全体に力を加え、力が膝の段階で前に逃げないようにします。膝が前に逃げるような出力をすると、骨盤と上体が後ろに倒れ、結果としてバーを身体から離す方向で押し出す形になり、力をこうりつてきに伝えられないだけではなく、背骨に不要なストレスをかけることになります。重量が重かったり、挙上回数が増えてきて上がらなくなってきたら、特にこの傾向が顕著に出るので注意しましょう。

<スタンディングオーバーヘッドプレスの良い例>

<スタンディングオーバーヘッドプレスの悪い例>

爆発的に出力するエクササイズ

スクワットプッシュプレス
オーバーヘッドプレスと同じ様にバーをもち、フロントスクワット(Session2スクワット編参照)をして、爆発的に立ち上がり、その勢いで真上にバーを持ち上げます。最も高い位置で耳の上辺りでフィニッシュします。力をスムーズに下半身から上半身に伝えることを意識します。このエクササイズは大きな負荷が胴体にかかり、背中が丸まりやすいのでその強さを保つ様にしましょう。また、バーを支える為に身体を起こしすぎて股関節に力が伝わらず、膝関節から前方向に逃げてしまわないように注意しましょう。

ジャーク
スクワットプッシュプレスよりもかなり浅く、速く沈み、素早くバーを押し上げます。そして、オーバーヘッドプレスとやプッシュプレスと同じ様に頭上最も高い位置でフィニッシュします。この時もバーは身体から離れずに、耳の上辺りでフィニッシュします。最も速い速度で行われるエクササイズの一つです。沈み込む時に膝だけ前に行く形で沈み込まず、同時にお尻位置も後ろにして沈み込みます。スクワットプッシュプレスよりも稼動域は狭いですがより速い動きなのでこれもまた、胴体に大きな負荷が加わるので反りすぎにしっかり力を入れておきます。

チャレンジ種目

オーバーヘッドホールド
シャフトやプレートをオーバーヘッドプレスのフィニッシュの姿勢で保持します。この状態で所定時間(3分程度を目標にしてみましょう)、正しい姿勢で保持出来る様にします。オーバーヘッドプレスで注意するべきポイントを意識して行います。限界に近づいた時に身体を反りすぎないようにしっかり力を入れておきます。また、耐えきれずに頭の上に重りを落とさないように、必ず前に下ろすようにします。このエクササイズは立った状態で胴体の固定の為の耐久性を高める為に行います。

<オーバーヘッドホールドの良い例>

<オーバーヘッドホールドの悪い例>

エクササイズ実施のガイドライン

動作の練習

シュラッグ、プレスエクササイズ
15回x3セット 週2から3回
爆発的エクササイズ
5回x5セット 週2から3回

本トレーニング
シュラッグ、プレスエクササイズ
5回x5セット 週2から3回
爆発的エクササイズ
3回x6セット 週2から3回

まずは週3回行ってみて、なかなかかいふくしなくなってきたら2週間に5回くらいに減らしてみましょう。

オーバーヘッドプレスのエクササイズは出力という観点からも、支えるとういう観点からも、非常に重要なエクササイズのひとつです。安全に留意しながらも、しっかり取り組んでゆきましょう。