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頭部外傷とその予防

重症頭部外傷の実態と予防のポイント
【監修】聖マリアンナ医科大学 スポーツ医学講座 藤谷博人

試合時の外傷および重症頭部外傷の実態:

競技復帰不能や生命に関わる重大事故を防ぐためには、まず実際にどんな状況でケガが発生しているのかを把握する必要があります。1991年から関東学生連盟において集計している公式戦のデータ(ゲームドクター制度下)、および重大事故報告書を元に、重症頭部外傷の予防について解説したいと思います。

1試合に1.33件のケガが発生
1991年から2010年までの秋季公式戦3367試合において、発生した外傷件数は4486件であり、1試合当たり1.33件のケガが発生しています。

受傷部位は膝関節、足関節が多数
受傷部位は膝関節が848件とトップで、以下、足関節(779件)、肩・鎖骨(532件)と続いています。見逃せないのが、頭部が429件とこれに続いている点であり、その90%以上が脳振盪(398件)と診断されています。

競技復帰不能例の9割近くが頭部の外傷
1991年から2012年の22年間に、関東学生連盟に報告された外傷のうち競技復帰不能となった重大事故は25件ありました(内、死亡例は3件)。部位では頭部が22件(88%)、頚部が3件(12%)となっており、頭部の外傷内容としてはほとんどが急性硬膜下血腫でした(22件中20件)。

「下級生」「攻守バックス」「夏合宿」には特に注意が必要
競技復帰不能となった頭部の重大事故 22件 を、カテゴリー別にみてみると明らかな傾向が認められました。学年では、1年生(9件)、2年生(8件)と下級生がほとんどを占めています。ポジション別にみると、最も多いのがRB(6件)で、DB、WR、OLが各3件とこれに続いており、バックスに多い傾向がありました。練習、合宿、試合別では、練習時(10件)、合宿時 (10件)、試合時 (2件) ですが、発生頻度を考えると年に1~2週しかない合宿での発生が非常に多いと考えられます。また時期としては、夏合宿のある8月(10件)が他の月に比べ圧倒的に多い結果となりました。

重症頭部外傷を防ぐためのポイント:

<夏合宿>

1.  疲労回復のための睡眠時間を十分に取る(特に下級生)
疲労による集中力の低下は、不意なヒットを受け頭が急激に振られ、急性硬膜下血腫を発症する危険性が高まります。特に下級生には十分な睡眠時間を取らせることを徹底してください。

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疲労回復のための休息時間をしっかりとりましょう。特に下級生が
十分な睡眠時間を確保できるように上級生や指導者が配慮しましょう。

2. 必ず休養日を設定する。
合宿期間中は疲労が溜まりやすく、重大事故のリスクが高まります。選手の疲労度合いに注意して、休養日(中日)を必ず設けるようにしましょう。

3. 日々の体調チェック
合宿中は毎日、頭痛や体重減少がないか、選手の体調をチェックすることをお勧めします。過去の急性硬膜下血腫の事故例では、発症前に頭痛がみられたというデータもあり、こうした症状がある場合には練習を休ませ医師の診断を受けてください。

 

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頭痛がある場合には練習を休ませ、医師の診察を受けさせましょう

4. 合宿所周辺の救急病院の確認
万が一、事故が発生した場合には一刻を争う状況となります。合宿所周辺の脳外科の救急病院の有無など、地元の病院事情について合宿所の方から聞いておき、チームドクターに相談して、必要ならば合宿地を変える決断も必要です。

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緊急時に備えて、合宿所周辺の病院と受け入れ体制を事前確認しましょう。

5. 食事メニューの改善
栄養バランスの良い食事が理想です。それらの摂取不足は、ケガの原因となる疲労の蓄積、集中力の低下にもつながります。一般に合宿先では、ビタミン、ミネラルが不足することが多く、事前に合宿所の方と食事メニューの相談ができればベストです。チームで夕食後に、補食を用意することもお勧めです。

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主食、おかず、野菜、果物、乳製品を揃える栄養フルコース型の食事は、
簡単に栄養バランスをとることができます。

<下級生>

1. 下級生は基礎体力向上を最優先する
新入生にはまず、練習に耐えられる基礎体力の向上を優先させましょう。頚部を中心とした筋力強化はアメリカンフットボール選手には必須です。

2. 上級生とは別メニューで
春季の練習は、上級生と下級生は別メニューを作成する工夫が必要です。昨今、部員数の少ないチームも多いのですが、スクリメージ練習などへの下級生の早過ぎる参加は、結局ケガを誘発しチーム力の向上にもつながりません。

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下級生と上級生の練習は別メニューで。下級生は基礎体力の向上を
最優先させてください。

<指導内容>

1. フルコンタクト練習、練習試合などの制限
頭部外傷による死亡症例は、長時間のヒットの繰り返しや、フルコンタクトの練習で発生しています。一般に、スクリメージ、練習試合などの多人数でのフルコンタクトは、長くやればやるほど外傷の発生率は高くなります。

2. タックルの指導
タックル時には、Heads upを常に心がけましょう。Heads upして相手をよく見ることで予想される衝撃に対し頚部を固める準備ができ、頭部が振られることを予防できます。また頭頂部でのヒット(spearing)が無くなり、頚部の重症外傷(頚髄損傷)の予防にもなります。

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