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(第3回) 股関節を動かしながら体幹部を固定する技術を習得する:スクワット編

9:00 AM

フィールドでのパフォーマンスを向上してかつ、フットボールをプレーするのに必要な耐久性を得る為に体の剛性を高める必要があると言う点からSession1では体幹部の剛性を高める為の技術を向上する為のトレーニングを紹介しましたがSession2ではこの対幹部に密接しており、かつ体を動かすのに非常に重要な役目を果たす股関節を動かしながら体幹部を固定する技術、すなわちスクワットという動作を身につけ、強化する為のトレーニングを紹介します。スクワット、特にバックスクワットはビッグ3というトレーニングにおいて非常にポピュラーな種目の一つとしても知られています。
前回紹介したように強く、速く動き、耐性の高い身体を作りながらサイズを増すという点で必要なのは身体を正しく固定する技術を身につけ、適切に動かし、大きな力を速く発揮できるようになる必要があります。
実際にフィールド上で動いてパフォーマンスする中で単純に体幹部を固めるだけではなく、可動部分である股関節をダイナミックに動かしながら力を発揮しながら固定することができる必要があります。実はそれを最もシンプルに実践するエクサスクワット1サイズがスクワットという動作なのです。言い換えるならばスクワットという運動で最も達成すべき点は股関節を通じて大きな力を大きな可動域で体幹部に伝えるだけでなく、その際に体幹部自身も剛性を確保されいている(ニュートラルな位置を維持して)必要があるわけです。

それでは、実際に出力を出す足を見てみましょう。スキルとしての大きな目的は股関節を通じて骨盤から上を真上に押し上げることです。その為に股関節と膝関節で直線的な力を上方向に発揮するようにする必要があるのです。

一つ目の写真を見てみましょう。膝関節だけでなく、股関節もしっかり曲がっていて力が真上に伝わっています。
正しい姿勢

次の写真を見ると膝は曲がっていても股関節が曲がっていない状態を見ることが出来ます。
悪い姿勢1

これでは力が前方向に逃げてしまい、正しい方向に力が伝わらないだけでなく、膝関節に大きなストレスが掛かります。下半身の関節の多くは押し合いをするようなストレスには強度を発揮しますが、関節自身を横にずらすようなストレスには余り強度を発揮できません。そして、帳尻を合わせてバランスを保つために腰を丸めて肩の位置を前にします。こうすることで腰にかかるストレスが大きくなります。さらに3つ目の写真は押し出しの方向が後ろにずれているものです。
悪い姿勢2

これは膝関節のストレスはそこまで大きくありませんが過度に上体が前傾してやはり正しい方向に力が伝わらないばかりか、上体に折り曲げられる力が大きく加わり腰部に大きなストレスが加わります。
次にスクワットしている絵を前から見てみます。
正しい姿勢前

やはり正しくスクワットしていると力が足から股関節に真っ直ぐ伝わっているのがわかると思います。写真のように押し出す過程で内側に落ち込んだり、過度に外側に開いたりすることも、力が真っ直ぐ伝わらないだけでなく、やはり関節に大きなストレスを掛けてしまうので好ましくはありません。

それでは、体幹部を固定しながら股関節を適切に機能させて力を伝える為に必要なエクササイズをステップ・バイ・ステップで、見て行きましょう。

テクニック獲得の為のエクササイズ

骨盤前傾
まず、最初のエクササイズは骨盤前傾というエクササイズです。これは、ベンチをまたいで座った状態で体幹部をニュートラルな位置に保ち(Session 1参照)そこから出来る範囲で骨盤だけで前傾してゆきます。
正しい姿勢座

この時、足の位置を大体太ももの下になるようにしておきましょう。前傾しようとして腰を丸めてしまわないようにしましょう。
悪い姿勢座

コンセントリック・スクワット
次にコンセントリック・スクワット(立ち上がりスクワット)というエクササイズを実施します。これは言葉の通りベンチに座った状態から立ち上がるものです。立ち上がるときには前の骨盤前傾で最も前傾したポジションで足を踏みしめて足の裏に均等に力がかかっている前傾具合を探します。前傾が少ない状態で足を踏みしめると膝が前に行くような方向に力が加わり、つまさに向かって体重がかかります。逆に足の位置が前過ぎると(相対的に骨盤が前傾し過ぎると)、体重は踵に残ったままになり、後ろの方向に力が逃げる形になります。正しい位置で踏みしめると足裏全体で力が加わりそのまま身体を真っ直ぐ押し上げる事が出来ます。ベンチに座った状態でバランスよく股関節と膝関節を曲げるポジションを作ってそこで真っ直ぐ下に押すことで自身が上に押し上げられます。やはりここでも体幹部のニュートラルなポジションを維持することは大前提になります。下ろすときは同じように下ろす事ができれば良いですが、このエクササイズの時点では座った状態できちんとしたポジションをとり、押し上げることだけに注力します。エクササイズを続けていって太ももの前の部分が強く使われている感じがする時は力が前に抜けていることが多く、身体が前に倒れすぎてしまう時は後ろに抜けていることが多いです。

アシステッドスクワット
次に同じエクササイズを下ろす時だけアシスト(棒などを持ってそれでバランスをとる)を使って行います。最初はまず股関節をしっかり曲げることを意識してそこからバランスよく膝関節も曲げるようにしてゆきましょう。下ろすときに股関節がしっかり曲がり始めたら(背中が丸まらないで)次ぐに股関節を曲げながら脛をつま先に近づける意識で膝も曲げてゆきます。これを繰り返して段々意識せずにスムーズに双方が曲がって、脛と上体がほぼ平行に動くようにしてゆきます。

プレートを持ってスクワット
アシストつきのスクワットが出来るようになったら股関節を意識しやすくする為に2.5から5kg位のプレートを腕を伸ばして胸の前で支持してスクワットを行います。プレートを身体の前で支持することで、股関節を大きく曲げながら少し後ろ気味に出力するようにすることで、しゃがみやすくなります。

これらのエクサイズを経て、そこから初めて自体重でのスクワットを行います。

フリーアームフロントスクワット
次に正しい姿勢を維持できている事をチェックしながら出来るエクササイズとしてフリーアームフロントスクワットを行います。これは両手を伸ばしてシャフトを肩の上に載せて行います。肩の奥のほうでその部分に置くとシャフトが喉に触れることもあります。この状態でスクワットをするのですが、キチンとニュートラルなポジションを維持して腕を上げないとバーは落ちてしまいます。また、過度に首を曲げて上を向きすぎてもやはり喉がつまってしまいます。このポジションでまずしっかりスクワット出来るようになりましょう。最初うまくできなければ上で行ったようにベンチに座ったポジションからスタートしてもよいでしょう。
この時点までのエクササイズは正しい姿勢を教育することが大きな目標ですので大きな重量を使う必要はありません。バーのみでも十分です。

スクワットのバリエーション

フロントスクワット
フリーアームフロントスクワットが出来るようになったら、フロントスクワットを行いましょう。ビデオにあるように様々なラック(バーを持つ)方法が有ります。3〜4本指かけた状態で肩に乗せる方法、肩の上に載せた状態で手を離して上から抑える(逆側の手で)方法があります。どちらの方法でも良いですが前者のやり方ができるようになると、将来パワークリーンなどのエクササイズを行うときにキャッチがスムーズになります。
バーを肩の上で支持してそこから真っ直ぐ重心を下げ、真っ直ぐ押し上げます。その時の足の裏への荷重は上のエクササイズと同様、足裏全体に均等に加わります。親指、小指の腹、踵で地面を掴むイメージで行うと良いかもしれません。疲れてくると腕が落ちてくるので落ちないように肋骨を広げて胸全体でバーの位置を維持するイメージでやってみましょう。

バックスクワット
次にフロントスクワットと同じように今度は肩の後ろにシャフトを載せたエクササイズ、バックスクワットを実施します。肩甲骨同士を寄せて肩を下げ首の後ろより少し下の僧帽筋出できた山の部分にバーを乗せてスクワットします。フロントスクワットと違い上体が折れ曲がったり、突っ込み過ぎて前傾が強くなってもある程度バーを支えることができるのでそのようなことが内容に気をつけて行いましょう。フロントスクワットよりも若干前傾になるポジションが適性ポジションになるので一般的にフロントスクワットよりも大きな重量を扱うことが可能です。

チャレンジ種目!

オーバーヘッドスクワット
これはスクワット動作だけでなく上半身の強さも要求されるエクササイズです。バーを左右の肘の間位の手幅で握り頭上で支持しながらスクワットします。スクワットをするときに胸をしっかり開いて(胸郭を大きく開いて)肩甲骨同士を寄せ合った状態で支持します。スクワットしてしゃがんでゆくと当然前傾するのでそれに合わせて肩関節の動きを調整します。ここで胸を開かずに肩の部分だけを大きく動かしてバーを後ろにやるように動かすと肩関節のストレスが非常に大きくなるので気をつけなければなりません。また、バーを頭の前で支持した状態でしゃがむと、大きく背中を反るか、そのままバーを前に残して支持することになり、共に腰、背中に大きなストレスを加えるので好ましくありません。行うときは上記のスクワットを行いながらバーを頭上で支持しながら骨盤前傾する練習から行うとよいでしょう。

爆発力向上の為の次のステップ

スクワット動作が出来るようになったら、ここまでの重量を持ったエクササイズに加え、同様の動作から飛び上がるトレーニングを行います。強く速く出力するには速い速度でトレーニングする必要があるからです。

スクワットジャンプ(しゃがみ込みのみ)
大きなパワーを発揮するにはしゃがみ込みを速くすることが必要不可欠です。そして、関心の反発力を生かして一気に飛び上がるわけですが、まずは素早く飛び上がれる寸前までのメカニズムを学習すべきです。スクワットと同じようにバランスよくしゃがみこみますが、非常に速い速度で行われるのでバランスが崩れがちです。上半身も使って飛ぶことになるので、素早く腕を後ろに引きながらしゃがみ込みます。この時しゃがみ込みが深すぎないように注意します。深く沈みすぎると急激にパワーが落ちるのでそのギリギリのポイントを探しながら行いましょう。

スクワットジャンプ(単発)
ここでは実際に単発のジャンプをします。先ほどのしゃがみ込みから、素早く飛び上がり、またしゃがみ込みの位置まで素早くおろして着地します。飛び上がるときは足首での押し出しを出来るだけ遅らせて全身が伸びきるイメージ(股関節で押し出す)で行いましょう。スタート状態で引かれている腕を強く振り上げます。空中では振り上げた腕は伸ばしきらず拳を顔の前でキープして飛び降りる瞬間にまた、引く、という形を取ります。着地はすぐに飛び上がれるポイントで着地しましょう。

スクワットジャンプ(連続)
単発のジャンプと同様に飛び上がりますがそれを連続的に行います。着地の瞬間に素早く小さくしゃがみ込みすぐ飛び上がります。この速い反動動作を身につけるのがポイントです。つま先すぎるポイントで着地してしまいがちになりますができるだけフラットに近い状態で着地するようにしましょう。着地時の大きな足首の動きは反動動作をスローにし、パワー発揮を阻害するからです。また、大きな衝撃が連続的に加わるので身体が撓まないように注意しましょう。

トレーニング初心者は骨盤前傾からフリーアームフロントスクワットくらいまでを丁寧に行いましょう。キチンとした姿勢で身体とバーを支えられるようになったら、重りを持ったエクササイズに移行してゆきます。エラーを見極めるという点ではフロントスクワットから始めるのがよいでしょう。どのようなスクワットをするのであれ上で書いたようなきちんとした力の方向性が得られなければ、効果的で無いばかりか、大きなケガの原因になるのがスクワットです。最初は絶対にテクニックが破綻しないように慎重に行ってゆきましょう。
ジャンプ系の種目はスクワットのテクニックを身につけ、フロントスクワットを始めてから段階を踏んでやり始めれば良いでしょう。

テクニックガイドライン
・ニュートラルな胴部及び首の姿勢(動きを通じて)
・出した力が胴体を真上に押し上げていますか?
・脛と骨盤の角度がほぼ平行に推移していますか?
・地面に真っ直ぐ力が伝わっていますか?
・足裏に加える力が、前や後ろにずれて行っていませんか?
力が正しく伝わらないと何処かで膝や腰などで破綻が生まれます。バランスの良い出力を身につけましょう。

セットとレップ数、及び頻度
一度にその動作を繰り返す回数のことをレップ数、その繰り返し動作を何回そのセッションで実施するかをセット数と呼びます。

正しいテクニックを身につけるまでは週に3回程度行ってもよいでしょう。
テクニック向上の為のエクササイズは10から15回を3セットを行うところから始めると良いでしょう。

非常に軽い重量で行いテクニック向上を目指す時以外は
まずは5レップx5セットを2分程度のセット間の休憩を挟んで行ってみましょう。
重量は5回位を正確にできる重量で行いましょう。そして、全てのセットを正確にできるようになったら次のセッションでは重量を増やしましょう。
週3回行って前回よりも疲労が強く残っている事が続いたら週2回に頻度を落としてみましょう。

スクワット動作はからだの安定性と、可動性を高める基本的で素晴らしいエクササイズです。是非やりこんで正しいテクニックを身につけ、強い力を発揮できるようになりましょう。
しつこいようですがテクニックを犠牲にして重りをあげてもフットボールの為のトレーニングにならないばかりか危険で、それが原因でけがをして、練習や試合に参加出来なくなったりもします。まずは正しいテクニックをを身につけましょう!

そして、実施する時は身体のかんかくに敏感になりましょよう。痛みはサイン!膝や腰が痛い時は動きが破綻していることが多いです。そういう時はもう一度テクニック向上の為のエクササイズに立ち戻って良いバランスを身につけましょう。