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(第2回) 体幹部と首を安定させる

12:00 AM

アメリカンフットボールボールというスポーツを安全にかつ効果的にプレーするには基本的なレジスタンストレーニングを理解実践することが非常に重要です。それには大きく分けて3つの理由があります。一つはより速く強く動き、強いブロックとタックルができるようにするため、2つ目が体を大きくし体重を増やす為、そして上記のブロックとタックルを含む接触において体が壊れたり、しない為です。大きくて強く速く耐性が高くなることは、より質が高い練習を継続的に行えるわけですのでよりフットボールが上手になる為に重要なのです。

その中でも体幹部を支える力を持つことは非常に重要です。体幹部を支えるにあたり、一番重要なことは、どのようにして支えるかを知ることです。先に述べた3つの要件を達成するにはまずこの体幹部を支えるに力を持つことが必要な事なのです。

まずはニュートラルスパイン(生理学的湾曲)という自然な背骨の位置を見つけ、感じることが重要です。フットボールコーチの言うヘッドアップというのは首だけでなく全体で頭をニュートラルに支えた状態を言うわけです。

体幹部は骨で言えば骨盤と背骨、肋骨と肩甲骨で構成されていると考えたらよいと言えるかと思いますが、特に大きく動く首は滑らかに動きながらもコンタクトがある時には強度を持たなければなりません。まずは負荷が加わりながら滑らかに動く範囲を増やす努力をします。ここで大事なのは負荷をかけすぎて滑らかに動かない事です。こうなると代償運動と言って、動くべき動きでないことをし始めてしまうからです。

体幹部を支える力を得る為にはニュートラルスパインを維持する為に必要な力の入れ方を身につけることが第一歩です。動画の中に出ているガッツポーズをしてみるとよいでしょう。

この状態で図にあるような様々な方向に力を加えてゆきます。基本的は常に圧縮の負荷を加えながら曲げや捻りの負荷を加えてゆきます。この負荷に対してニュートラルなポジションを維持するようにするようにします。

このようなニュートラルスパインを維持することが安全にパワフルにプレーできる為の第一歩です。

繰り返しになりますが過剰な負荷を加えてポジションが狂った状態で出力し、姿勢を維持するトレーニングをすることは身体にプログラミングすべきものが間違えて伝わってしまうのです。こうなると筋力があっても実際の耐性の向上やパワー発揮にはつながらず、先に述べた3つの要件のうち多くても1つしか達成されないわけです。これは好ましく無いばかりではなく、危険でも有りますので、正しい姿勢の維持を第1に考えて実施するようにしましょう。

ここで示されたエクササイズは身体を支えるための技術を学びそれを一定時間出来るようにするためのエクササイズです。特に胴部の筋力は次回以降紹介してゆく身体を動かすエクサササイズで実践的な強さを得ることになりますが、それを引き起こすためにはこれらの基礎が非常に重要なのです。

エクササイズの説明

正しい姿勢を確認し、準備をする

立った状態で腕を上げてガッツポーズをします。その際、できるだけ頭は高い位置に来るようにします。背中を丸めたり反り過ぎたりしないようにしましょう。顎は引き、視線は遠くを広く見るようにしましょう。この姿勢が胴体を固定する基本の状態です。このポジションをニュートラルポジションとしてこのポジションを出来るだけ維持できるようにします。

首を後ろに曲げる

まず四つん這いの態勢をとり、その状態で上体はガッツポーズをした時と同じように背骨をニュートラルポジションに保ちます。その状態で真上から頭を軽く押さえてもらい、背中が丸まらないようにゆっくりと首の曲げ伸ばしをします。

首を横に曲げる

ベンチなどの上に横向きに寝て手をおろし、下の手を地面に付けて肩を支えます。この状態で真上から頭を軽く押さえてもらい、背中が丸まらないようにゆっくりと首の曲げ伸ばしをします。

首を前に曲げる

ベンチなどの上に上向きに寝て胸を張ります。この状態で真上から頭を軽く押さえてもらい、背中が丸まらない(肩が上に上がらないように)ようにゆっくりと首の曲げ伸ばしをします。

コメント

それぞれのエクササイズに付き曲げ伸ばしでそれぞれ4秒かけて、68回を1セットにして23セット行いましょう。滑らかに大きく動ける程度の軽い負荷で行うことがポイントです。

ある程度慣れてきたらそれぞれの開始ポジション(ガッツポーズをした時と同じ位置)であるニュートラルポジションで510秒間負荷を加えてもらって耐える運動を35回を23セット行いましょう。

すべてのエクササイズで必ず最初のポジション(ニュートラルポジション)に必ず戻るよう意識しましょう。

最初は負荷をそこまで増やしすぎないで週3回程度行ってみましょう。まずは首が負荷を受けることに慣れる事こそが最も大事なポイントです。

身体を固定する為の基礎を学ぶ

プローン

四つん這いの状態から両足を伸ばし腕立ての態勢を取ります。この時、手の位置は肩よりも少し前にします。つま先を顔に近づけた状態から頭の方向に全身が伸び上がるように地面を押し出します。同時に設置している手を使って押し返して前に動かないようにします。この時背中が丸まったり、肩甲骨が離れすぎないようにします。顎は引きながらも上目遣いで少し前の方を見るようにします。肋骨が縮こまらないで広がるように意識します。全身を見ると頭から足先までがまっすぐのラインに見えるように(背骨はナチュラルな状態で)しましょう。絶対に呼吸を止めずにやりましょう。

プローン+首

プローンの状態でゆっくりとパートナーに後頭部を真下に押してもらいます。押された時に肩甲骨の間あたりが丸くならないようにして、プローンと同じように上半身、下半身に力を入れます。頭を上げるのではなく、頭そのものを上に引き上げるようにして耐えるところがポイントです。姿勢が崩れるほど強い力を加えるのではなく維持できるギリギリのちからを加えるようにしましょう。もし、姿勢が崩れた場合は一度力を抜いてもらってポジションをリセットして再度続けます。息が止まってしまいがちなので通常の呼吸を続けて行いましょう。

プローン、肘

腕立ての姿勢から手に力を入れた状態で肘をゆっくり曲げ、地面につきます。肘だけでなく手にも力が加わっているようにするのがポイントです。やはりプローンと同様に背筋が真っ直ぐになるようにしましょう。特に肘をつくと肋骨が縮こまりやすいので意識して胸を広げて行うようにしましょう。やはりしっかり足で地面を押し出す力を発揮し続ける事が重要です。

プローン、肘+首

プローンの肘を伸ばした状態の首に負荷をかけるのと同じことを肘付きの姿勢で行います。肘を伸ばした態勢よりも背中が丸まりやすいので特に気をつけます。

サイド

プローンで作った腕立ての姿勢から片手を離し付いている方の手で地面を強く押して身体をゆっくり開いてゆきます。腰の位置が手を付いている側にずれないようにしましょう。肩のラインと腰(骨盤)のラインが平行になるようにしましょう。単に支えるだけでなく両足でしっかり身体を頭の方向に押し出すことが重要です。踵を地面に付けてしまうと押し出す力が発揮しづらくなるので注意しましょう。上の足の足先から頭までがまっすぐのラインになるようにしましょう。完全に開いた状態が一番カンタンで浮いている側の方が地面に近づくとより大きなストレスが体幹部に加わります。

サイド+首

サイドプランクの姿勢でパートナーに側頭部を真上から真っ直ぐ押してもらいます。地面に付いている手でしっかり身体を支えてニュートラルな位置を維持するように力を入れます。加わる力が増してくると腰が浮いてきたり逆に沈んだりするので真っ直ぐな位置を維持するようにします。姿勢が崩れるほど強い力を加えるのではなく維持できるギリギリのちからを加えるようにしましょう。もし、姿勢が崩れた場合は一度力を抜いてもらってポジションをリセットして再度続けます。息が止まってしまいがちなので通常の呼吸を続けて行いましょう。

サイド、肘

プローンで作った腕立ての姿勢から肘を外に向けて片側だけ肘を曲げて地面にゆっくりつけます。その姿勢でサイドプランクの時と同様に伸ばしている側の手を離して身体を開いてゆきます。サイドプランクと同様に一番開いたポジションが最も簡単で浮いている側の肩が地面に近づくと難しくなります。どのようなポジションでも肩甲骨同士が離れすぎないで肘から肘のライン、肩のライン、腰のラインが平行に動くようにします。

サイド、肘+首

肘を伸ばした態勢と同じようにパートナーに側頭部を押してもらいます。やはり肘を伸ばした状態で行うよりも態勢が崩れやすいので気をつけて行いましょう。

ショルダーブリッジ

仰向きに寝た状態で膝を曲げて足を肩幅程度に開きつま先をあげます(踵で腰を押し上げます)。腰を上げる前にお腹に力を入れるようにし、それを保ちながら腰を上げてゆきます。その時肘を地面に押し付けて胸を開くようにします。腰を上げる際に踵全体を使って少し外側に押し出します(足の位置が骨盤の幅よりも広いはずなので)が、過度に膝同士が近づかないように気をつけます。腰が反りすぎないように気をつけましょう。

ショルダーブリッジ(回旋の負荷)

ショルダーブリッジの状態で手を胸の前で合わせ天井に向けて伸ばします。その状態でパートナーに横方向に押してもらいます。身体を絶対によじらないようにして、押された方の逆側の足で押し返します。この時がに股になっていると力が胴体に伝わらないので気をつけましょう。自ら身体を捻るのではなく、捻られないようにするのがポイントです。

トールニーリング(両膝付き)(ローテーション)

ブリッジで行ったローテーションのエクササイズを膝立ちの姿勢で行います。つま先をしっかり地面につけて押された力に対して逆側の足で押し返します足の裏が内側を向いている(足が外を向いている)と力が伝わらないので上手く支えることが出来ないので膝や足が外を向かないようにしましょう。つま先だけを調整するのではなく膝の向きとつま先の向きがおなじになるようにしましょう。また、力がはいると屈んだ姿勢になってしまいがちになるので胸を開いてニュートラルポジションも維持して行うようにしましょう。

コメント

これらの身体を固定するエクササイズはそれぞれのレベルで30秒(完璧にできなければ途中で止めても良い)維持するのをそれぞれの方向で2〜3セット練習の前に行うと良いでしょう。これらのエクササイズはすべて行う必要は無くそれぞれのレベルに合わせたものを行いましょう。例えばプローンが30秒キチンと出来るようになったらそれに首の負荷を加えたものを行ったりする感じです。

段階付の参考に下の表を使うとよいでしょう。

Level

       

1

首単体の曲げ伸ばし

プローン

サイド

ショルダーブリッジ

2

できるだけ他の体幹と合わせる

プローン+首

サイド+首

ショルダーブリッジ(回旋)

3

首単体の曲げ伸ばし

プローン肘付き

サイド肘付き

両膝付き(回旋

4

できるだけ他の体幹と合わせる

プローン肘付き+首

サイド肘付き+首

 

さあ、トレーニングを始めましょう。正しく安全に行えば必ず身体は反応します。自分と向き合ってゆきましょう

Be Better Every Day!

注意

本トレーニングプログラムを実施する前には必ず医師に判断を仰いで下さい。ここで示した運動がケガや重篤な疾患を引き起こす可能性や死に至る可能性も有るという点を理解した上で実施してください。本プログラムを実施したことによる、ケガの発生、内科的疾患の発症、またそれらが原因で実施者を死に至らしめたとしても日本アメリカンフットボール協会及び監修者は一切その責任は負いません。